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【最新マセラティ3モデル試乗:後篇】 グラントゥーリズモの完成度は凄まじい! 速度域のスイートスポットはMC20チェロより上 これぞGTカーだ!!
マセラティの最新車種であるMC20チェロ、グラントゥーリズモ、グレカーレに関するエンジン編集部とモータージャーナリストの座談会を通じて、各車の特徴や魅力が明らかになった。
グラントゥーリズモは75周年記念車であり、A6ピニンファリーナの登場からの75年を称えている。往時の名車のデザイン要素が現在のモデルにも受け継がれている。
MC20チェロはスーパー・スポーツカーであり、GTカーであるグラントゥーリズモと比較された際に、異なるスピード域での特性が評価されている。
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そこにイタリア車があるだけで、まわりの空気がパッと華やいで、テンションが上がる。マセラティはそんなイタリア車のなかでもとびきり華やかさがあるブランド。人の心を惹きつけるオーラは特別なものがある。今回はある意味マセラティの今を象徴する最新のスーパー・スポーツカー、MC20チェロとGTカーのグラントゥーリズモと、そしてSUVのグレカーレにモータージャーナリストの西川淳氏とエンジン編集部の面々が試乗して、マセラティ独特の魅力を探るシリーズの後篇。前篇のMC20チェロに続いてグラントゥーリズモとグレカーレのインプレッション座談会をお送りする。
◆自分たちのルーツの1つ
村山 グラントゥーリズモは75周年記念車だそうですが、何の75周年ですか? 創業は1914年だから今年は110年目ですし。
上田 本国の発表は一昨年だから、2022年の75年前は1947年。つまりこの年に登場した戦後初の市販ロードカー、A6ピニンファリーナの登場から75周年、ということだね。
村上 まさに名車中の名車で、当時としてはすごくかっこいいGTカーだった。フェンダーに付く3連のサイドベントは、後のマセラティにも延々受け継がれていくんだよ。
上田 その後のA6GCSベルリネッタの楕円グリルが、先代と現行型のグラントゥーリズモの顔つきのモチーフになっていきます。
西川 このA6GCSでマセラティは確信犯的にアグレッシブかつエレガントな個性を出しはじめた。
村上 ピニンファリーナはこの後フェラーリと蜜月になって、長くマセラティのスタイリングに関わらなかったけれど、5代目のクアトロポルテや先代のグラントゥーリズモで再び手を組むことになる。
西川 現行型は古のラグジュアリーGTを、再び新しいグラントゥーリズモで表現しようとしたわけです。
村上 ローマの人々が、何かあるとギリシャの文化を学んで自分たちに繋がる文化の源流を研究したように、マセラティも過去に学んだ。自分たちのルーツがどこにあるのか。その1つは間違いなく伊達なGTカーにある。それにしても先代も現行型も、このグリルの押し出しの強いこと。アクが強いよね。
西川 どうだ! って感じですよね。まったく日和っていない。
村上 先代を手がけたのはピニンファリーナにいたケン奥山さんだけど、まさしくイタリアのクルマになっていた。現行型もそうだよね。
西川 MC20チェロとグラントゥーリズモの2台とも東京~京都を往復したんですが、最初はチェロって素晴らしいGTカーだな、と思ったんですよ。でも、グラントゥーリズモの完成度はさらに凄まじくて、速度域のスイートスポットは全然上。チェロがアウトストラーダが基準としたら、グラントゥーリズモは完全にアウトバーンの領域。チェロの方が日本の道路でリラックスできる速度域に合っている。
村上 イタリアの伊達男の見た目からは想像できない秀才なクルマだ。なにしろ、いかにも後輪駆動みたいなプロポーションなのに4輪駆動。
西川 ホントによくできているんですよ。ステアリングを操作しているときはまとわりつく感じだとか、意識させる手応えはない。でも加速しているときだとか、すっと前から引っ張っている独特の感覚がある。
村上 普通に走っていたら4輪駆動とは気がつかないかもね。サーキットでもほとんど感じなかった。
西川 5m近いロングノーズのGTカーに乗っていると思えないくらいクルマが小さく感じて乗りやすい。
村上 秀才なクルマになったなぁ、と思ったのは、車体の剛性感の凄さも理由の1つかな。
西川 確かに、ちょっと前のイタリア車はシルクのスリッパみたいなところがあった。見た目と肌触りは最高だけど履くと……(笑)。BEV版とシャシー共有のいい影響だと思う。
村上 もう中身はドイツ車もかくや、というクルマになった。なんだけど、感覚的には伊達男感もある。
西川 峠道だと、スリリングだけど安心して走れる感じ。
村上 かつての3200GTなんかは本当にスリリングだったけど。
西川 姿勢制御が自然にすごく効いているので、スリルを感じつつも、安心して踏んでいけますよ。
村上 それでも、ステアリングやペダルの感触には鋭さがあるよね。
荒井 クルマの立ち位置としてはラグジュアリーなGTのはずなのに、僕は走行モードをどんどんハードな方にしたくなりましたね。逆にMC20チェロは肩の力が抜けている。
西川 そこもすごくイタリア車っぽい。スーパー・スポーツカー系はもうスタイリングだけで圧倒されるんですけど、GTカーやSUVでも、乗ると気分を高揚させるものがある。運転に自信がない? いやそんなことをいわずに試してみろよ、って煽ってくるものがある。むやみに人を信じているところがあって、人間くさくて、イタリア人っぽい。
村山 ラグジュアリーとスポーツの間のグラデーション部分が広く感じました。同じイタリア車でも、アルファ・ロメオのジュリアは激しいと、もっと激しい、みたいに振り幅が狭い。グラントゥーリズモは広い。
西川 人に甘いんですよ。
村上 西川さんとイタリアの国際試乗会で乗ったBEV版のフォルゴーレも、乗り味は内燃エンジン車とそっくり。すごくよくできている。
西川 ラグジュアリーなGTとして、こっちもアリかな、と思わせるものになっていましたね。
村上 けっこう穏やかな、大人ですから、という味つけだったよね。
◆主張がすごい
西川 僕は今のマセラティを貫いている共通点は、GTカーであることだと思うんです。MC20チェロも、グラントゥーリズモも、速度域は違えどやっぱりGTカーだった。そしてグレカーレもすごく優秀で、街乗りより高速が好み。
荒井 朝イチでこれに乗ってきたんですが、マセラティは4気筒のマイルド・ハイブリッドですらこんなに吠えるのか、って思いました。始動直後の主張がすごいんですよ。
村上 そこは昔ながらなんだ。
村山 V6のネットゥーノとはもちろん違いますが、いい音ですよ。
村上 車台はアルファ・ロメオのジュリアやステルヴィオと同じジョルジオ・プラットフォームだよね。でもステルヴィオとはまったく違う味つけになっている。
上田 あんなにキビキビ、スパッとは動かない。
村上 高級SUVでありながらGTカー的なものをマセラティが造ろうとしているのがよく分かる。
西川 特にインテリアだとか、視覚的にも触感もすごくいい。公式にはアナウンスはないけど、導入直後よりクルマが熟成されている。
上田 それもまたイタリア車らしい。
荒井 グラントゥーリズモと同じでハードなモードを選びたくなりました。
村上 根本的に血筋がスポーツなんだよ。ただしそこにすごくエレガントなものがミックスされている。
西川 ローズ・ゴールド・リキッド・メタルというピンク色で、しかも赤白緑のトリコロールのストライプが入って成り立つクルマは他にない。
村山 あのストライプは塗装でしたよね。すごく手が込んでいる。
上田 MC20チェロの薄いブルーもグラントゥーリズモのマット塗装もそうですが、こういう配色もまさにイタリア車だなぁ、って思いますよね。
西川 ちゃんとしたイメージが最初からあって、それに合わせて色や素材を当てはめている感じがする。まず樹脂のベース素材があって、そこに革を貼っただけ、という感じじゃない。イギリスのクルマもそうだけど、イタリア車はよりビビッドで、元気で、洒落ていて、主張している。
◆三台を並べたくなる
西川 しかし今回乗ってあらためて気がついたけど、本当にマセラティが好きな人なら、この三台、全部ガレージに入れたくなるよね。グレカーレは4気筒だったけど、すべてネットゥーノで揃えてもイイ。
村山 今回試乗したグレカーレは、鼻先が軽い感じで僕は好きですけど。
上田 あえて揃えなくてもイイ。
村上 エンジンの部分を除いても、三台とも性格が違うし、そして三台とも象徴的なクルマだ。
西川 それでいて全部、汎用性はすごく高い。とくにGTカーとして。
上田 GTであることをここまで貫いているブランドはほかにないかも。
西川 やっぱり三台並ぶガレージの壁には三つ叉の槍を飾らないと(笑)。
上田 マセラティ兄弟のマリオが見たという、ボローニャの広場にあった海神ネプチューンの像が持つ槍が起源の、あのエンブレムを三台と掲げるわけですか(笑)。でもそこまでマセラティ一筋のひと、います?
西川 そういうひとがどんどん現れて来るのがMC20以降の、新世代のマセラティのあるべき姿だと思うよ。
話す人=西川 淳+村上 政(ENGINE編集長)+荒井寿彦(ENGINE編集部)+上田純一郎(ENGINE編集部、まとめも)+村山雄哉(ENGINE編集部)
■マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ
駆動方式 フロント縦置エンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4965×1955×1410mm
ホイールベース 2930mm
車両重量 1870kg
エンジン形式 水冷V型6気筒DOHCツインターボ
排気量 2992cc
ボア×ストローク 88×82mm
最高出力 550ps/6500rpm
最大トルク 650Nm/2500-5500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア
(後) マルチリンク+エア
タイヤ・サイズ(前/後) 265/30ZR20/295/30ZR21
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
車両本体価格 3660万円
■MC20チェロ
駆動方式 ミドシップ縦置エンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4670×1965×1215mm
ホイールベース 2700mm
車両重量 1750kg
エンジン形式 水冷V型6気筒DOHCツインターボ
排気量 2992cc
ボア×ストローク 88×82mm
最高出力630ps/7500rpm
最大トルク 730Nm/3000-5750rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル
(後) ダブルウィッシュボーン+コイル
タイヤ・サイズ(前/後) 245/35ZR20/305/30ZR20
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
車両本体価格 4438万円
■グレカーレ・モデナ
駆動方式 フロント縦置エンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4845×1980×1670mm
ホイールベース 2900mm
車両重量 1920kg
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHCターボ+モーター
排気量 1995cc
ボア×ストローク 84×90mm
最高出力 330ps/5750rpm
最大トルク 450Nm/2250rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル
(後) マルチリンク+コイル
タイヤ・サイズ(前/後) 255/40R21/295/35R21
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
車両本体価格 1114万円
(ENGINE2024年8月号)