大手中学受験塾の脱落者が大人になって知った「勉強する」本当の意味

AI要約

学校基本調査によると、中学校に在籍している子どもの数は減少しているが、中学受験者が増加している。

筆者は受験塾に通わされ、勉強の苦手意識を持ちながらも友達との楽しい時間を過ごしていた。

中学受験について言及しない両親が悲しむことに気づき、勉強に取り組む姿勢を持つようになる。

大手中学受験塾の脱落者が大人になって知った「勉強する」本当の意味

文部科学省が令和5年12月に発表した「学校基本調査」によると、中学校に在籍している子どもの数は317万7508人で前年より2万7712人減少。公立中学に通う人数は290万2882人で前年より2万8840人減少している中、私立中学に通う子どもは24万7622人で1280人増加している。

つまり、子どもの絶対数は減少しているが、中学受験をしている子どもの数が増加していることを意味している。

もちろん、子どもの教育・学びは受験がすべてでは一切ない。ただ、受験しない=学びはどうでもいい、ということでもまったくない。小学生の頃、大手中学受験塾に通わせられながら脱落した編集者が、「もっと勉強すればよかった」と心から思い、2022年から始めたプロジェクトで「学ぶ」ことの意味をさらに知った。多くの素晴らしい学びを目の当たりにし、身をもって感じたことを綴った記事を再編集しお届けする。

前編では「勉強すればよかった」と心から思うまでの過程をお伝えする。

「そんなに勉強しないと、お父さまとお母さまがお嘆きになるわよ」

小学6年生のとき、筆者は同じ塾に通う友達から、ズバッと言われたことがある。このときは公立小学校に通う同級生の口から“お父さま”“お母さま”“お嘆きになる”、という洗練された言葉が出たこと、その言葉をとても自然に使いこなしたことになにより驚いた記憶があるが、言われたことにはグウの音も出なかった。

筆者は東京都内に生まれ育った。当時は都内でも受験する人はそこまで多くなかった。

そもそも中学受験をしたいと親に言ったことはない。親からも受験をしないかと聞かれたれたことすらないのに、きょうだい割引があるという理由だけで学童代わりに姉が通っていた大手中学受験塾に通わされていたのだ。

本と漫画は幼い頃から山ほど読んで好きだったから、国語の点数だけでかろうじて入塾テストを通過したが、会員の中でも最下位のクラスだった。

教材は開いたことがないのでいつも新品同様。授業中はノートにずっとイラストを書いていた。理科の授業中に「わかる人!」と言われたとき、私以外の全員が手を挙げたため自分も挙げたら見事に指されて立ち上がり、「……わかりません」と答えて、クラスメイトに失笑されたこともある。毎週日曜日に行われる週末テストではつねに低空飛行で、ビリから2番を取ったこともあった。いわゆる「落ちこぼれ」と言われる存在だった。

友達に会いに塾に通い、『王家の紋章』とか『うる星やつら』などのマンガの貸し借りをするのを楽しみにしていた。しかし受験が近くなるとやる気のない人は邪魔になる。そんなときに、冒頭の言葉を言われたのだった。中学受験について一言も言及しない両親が悲しむとは思わなかったが、確かに塾に来てもへらへらしている私の存在は邪魔になるな、とは強く思った。