【社説】全中大会の縮小 少子化踏まえ改革継続を

AI要約

日本中学校体育連盟は、全国中学校体育大会の競技数を半分に削減することを決定した。

競技力の低下を懸念する声があるが、生徒の競技継続や目標設定を支援する工夫が必要。

全中の変革には生徒や指導教員の意見を取り入れ、持続可能な大会運営を目指すべきだ。

【社説】全中大会の縮小 少子化踏まえ改革継続を

 中学スポーツの競技環境が大きく変わる。日本中学校体育連盟(日本中体連)は主催する全国中学校体育大会(全中)の競技数を2027年度以降、ほぼ半分に削減することを決めた。

 少子化で運動部に入る生徒は減っている。大会に出場する部を担当する教員の負担は大きく、近年は暑熱対策にも神経を使う。今日の課題を考えれば、大会規模の縮小は理解できる。

 一方で全中を目指し、高いレベルの練習を重ねている生徒もいる。夢や意欲を失わないように配慮を求めたい。

 全中から除外されるのは、夏季と冬季の計19競技のうち水泳、体操、ソフトボール男子、スキー、スケートなど9競技だ。原則として、加盟校数に対して活動実態のある部の設置割合が20%未満の競技が対象となった。

 学校によっては生徒の減少で廃部が相次ぐ。五輪で数々のメダルを獲得している水泳と体操は、生徒が施設と器具が整った民間のスクールやクラブを中心に活動しているため、学校の部設置率が低い。

 教員の負担軽減を求める声は以前から上がっていた。全中に出場するには市町村や都道府県、地域ブロックなどの予選に出なくてはならない。教員は日常業務に加え、部活の生徒の引率、大会の準備や運営で多忙を極める。

 競技数の削減は現状に応じた判断と言える。存続する陸上、サッカー、バスケットボール、柔道、ソフトボール女子なども日程を短縮し、参加者数と開催経費の3割減を目指すという。

 競技力の低下を懸念する声もある。それを防ぐには、生徒が目標を持って競技を続けられる工夫が必要だ。既に全中に代わる大会が検討されている競技もある。

 日本中体連は競技団体と調整を進めるとともに、当事者である生徒や指導教員の意見を聞き、影響を最小限に抑えてもらいたい。

 1979年に始まった全中は、競技の普及や選手育成に一定の役割を果たしてきた。その半面、さまざまな問題も抱えている。

 体罰に象徴される行き過ぎた指導、無理な練習によるけがは、勝利至上主義の弊害といわれる。有力選手の獲得合戦の低年齢化も進む。

 全中は曲がり角に差しかかっている。日本中体連は社会の変化を踏まえ、持続可能な大会の運営方法を継続して考えなくてはならない。

 国が推進する部活動の地域移行に合わせて、昨年から地域のスポーツクラブが全中に出場できるようにしたのは妥当な決定だ。学校単独で団体競技のチームをつくれなくても、スポーツクラブが受け皿になり得る。

 競技レベルにかかわらず、スポーツを楽しむことは教育効果が大きい。学校、地域は生徒に対し、できるだけ多様なスポーツに接する機会を提供してほしい。