「生々しく激しい土の動き」を形に…萩焼・三輪休雪の名跡を継承する家の長男、三輪太郎さん

AI要約

山口県萩市の萩焼窯元・三輪窯の三輪太郎さんが、初となる茶碗の作品「土嵐」シリーズを発表した。土や釉薬の研究に取り組んできた三輪太郎さんが、生々しさと激しさを追求した作品を作り上げた。

「土嵐」シリーズの茶碗は、異様かつ力強い造形で、表面に施された特殊な技法により、土そのものの生命力を感じさせる。高温で焼成された器は、荒々しい質感を持ち、見る者の心を魅了する。

三輪太郎さんは、祖父や父の作陶を手伝いながら、自身の作風を模索してきた。ある冬の体験をきっかけに、土のエネルギーを形に変える方向性を見出し、個展で会心の作品を生み出す。

 350年以上の歴史がある山口県萩市の萩焼窯元・三輪窯の三輪太郎さん(39)が、初となる茶碗の作品「土嵐」シリーズを発表した。休雪の名跡を継承する家の長男で、長い間、土や釉薬の研究に没頭してきたが、「生々しく激しい土の動き」を追究していくという姿勢を形で示し、作家としての一歩を踏み出した。

 炎の揺らめきにも、植物の芽吹きにも見える口縁部。表面を豪快に削った胴部。高さ15センチほどの土嵐は、異様かつ力強い造形で、見る者の心をつかむ。土に砂や鉄分を加え、通常の焼成より45度も高い約1265度で焼いた器は、黒金のように荒々しい質感で、長石や木灰による釉薬と混然一体となって、土そのものの生命力を感じさせる。

 武蔵野美術大で彫刻を学び、大学院を経て萩に戻ったのは2009年。以来、祖父の壽雪さん(十一代休雪)、父の十三代休雪さんの鬼気迫る作陶を手伝う中、「土とは何か」を突き詰めて考えるようになった。

 決まった作風を継承するのではなく、「そのときを生きている人が、一から自分のスタイルを作り出す」という三輪家。長く答えを見いだせずにいたが、ある冬、工房の裏山をシャベルで掘り起こした瞬間、「濃い緑の匂いが地中から立ち込めた。むせ返るほどの命の匂いがうごめいていた」。この経験から「土のエネルギーを形にする」という方向性が見えてきた。

 3月に東京都内で開いた初個展の直前に完成させた土嵐は「その瞬間にしかできないものだった。(土から)命が吹き出したように見えた」という会心作だった。太郎さんは「これからも見る人の心を動かす仕事をしたい」と話す。(井上裕介)