ファウスト・ピナレロ氏インタビュー 「ピナレロがピナレロである理由」

AI要約

ピナレロの代表であるファウスト・ピナレロ氏が来日し、最新モデルのピナレロ・ドグマFの発表に応じた。ピナレロはエアロロードと軽量万能ロードを作り分けず、あらゆる性能を融合させたバイクを開発してきた。これが他社にも影響を与え、現在のレーシングバイクの傾向にも影響を与えている。

ピナレロは、選手たちの要望に応えるため、スプリントや山岳ステージにも同じバイクを使用したいと考えており、バイクを変えることでの不都合を避けている。チームとの緊密な協力により、ピナレロ独自のスタイルが確立されている。

ファウスト・ピナレロ氏は60歳を超えているが、引き続き自転車界を牽引し、イタリアンブランドとしての地位を維持している。その信念と姿勢がブランドの成功につながっている。

ファウスト・ピナレロ氏インタビュー 「ピナレロがピナレロである理由」

ロードバイク界における最重要モデルの1台、ピナレロのドグマ。そのモデルチェンジに際し、同社の代表であるファウスト・ピナレロ氏が来日し、インタビューに応えてくれた。かつてロードバイクシーンの先頭集団を形成していたのはイタリアンブランドだったが、それらの存在感が徐々に薄くなり、イタリアの黄金時代は過去のものとなった。そんななか、ピナレロだけはトップブランドとして変わらず君臨している。その理由とは?  自転車ジャーナリスト安井行生が聞いた。

羽田空港内にある展示ホールで、11代目となるピナレロ・ドグマFが発表された。北米勢の勢いが止まらないロードバイクシーンの中で気を吐いている数少ないイタリアンブランドであり、グランツール常勝といわれるほどレースシーンでも存在感を放つピナレロ。同社の代表を務めるファウスト・ピナレロ氏は、間違いなく自転車界屈指のセレブリティだが、イタリア人というイメージを覆し、約束の時間のなんと2分前、12時58分に会場に姿を現した。

「どこで話す? ここか? 別の場所? よし、いこう。撮影もするんだよな? 」。

相変わらずパワフルだ。60歳を超えているとは思えない。こっちも負けじと気合いを入れてインタビューを開始する。

安井:スペシャライズド(ターマック)やトレック(マドン)など、エアロロードと軽量万能ロードの統合が進んでいますが、ピナレロはエアロロードと万能ロードを作り分けることはせず、最初からドグマ一本でしたね。結局、ピナレロのやり方が正解だったという結果にも見えますが、他社の「レーシングバイクの一本化」という動きを見てどう思われますか? 

ファウスト:1994年にピナレロはミゲル・インデュラインのためにカーボンモノコックフレームのエスパーダというTTバイクを作ったんですが、そのときに「空力だけでも、軽さだけでも、快適性だけでもだめ。全ての性能が融合していて、どんな状況でも速く走れるバイクが真のレーシングバイクなんだ」という知見が得られたんです。それからずっと、ピナレロは「1台であらゆる状況を速く走れるバイク」を開発することに注力してきました。他のメーカーもそれに気付いたのか分かりませんが、ピナレロの流れに追随してきましたね。まぁ、他社がどうしようが私にとってはあまり関係ありませんが。

安井:(笑)。

ファウスト:それに、「スプリントステージも山岳ステージも同じバイクで走りたい」というのはチームの要望でもあるんです。選手たちは、バイクを変えることで微妙なポジションやフィーリングが変わってしまうことを嫌います。ステージ毎にバイクを変えて乗り方やポジションを変えるのは、ライダーにとっても負担になるんですね。バイクを供給しているチームとの密接な関わりがあり、彼らの声を製品づくりに反映した結果、ピナレロ独自のスタイルが確立されたのだと思います。