26年連れ添った妻が亡くなり、半年後にかかってきた電話。伝えられた言葉に驚かないではいられなかった

AI要約

病気を抱える妻との結婚記念日を祝う夫の物語。

妻が残したメッセージと、夫との思い出に触れる瞬間。

終末期の病と向き合いながらも、愛を感じる2人の物語。

26年連れ添った妻が亡くなり、半年後にかかってきた電話。伝えられた言葉に驚かないではいられなかった

レベッカと結婚して26回目の記念日を、私たちは病院で祝った。妻は末期の大腸がんを患っていて、痛みを緩和するためホスピスで過ごしていたから、お祝いムードというのは正しくないかもしれない。でも、2人とも祝おうとしたことは確かだ。

私は少しだけおしゃれをし、妻にはエレガントな青色のワンピースを選んだ。自分たちの斬新さあふれる結婚式の写真と彼女が好きだった赤ワインを手に病院に向かった。主治医に確認後、車椅子を押して庭に行き、ワインを飲んだ。暖かく、晴れた9月初旬の金曜日。晩夏を彩る花々が咲き乱れ、2頭の青色の蝶が私たちのつらさと喜びが混じったパーティーに顔を出した。

レベッカは精神的な落ち込みが和らいでいたようで、結婚式の思い出を語り合ったところで、自分が死んでしまった後、私にどういう人生を歩んでほしいと思っているか話し始めた。

まずは子どもたちのこと。精神的にも経済的にもできる限りは手助けしてほしいということ。次に妻である自分のこと。思い出す時には病気をした姿ではなく、愛情の面を覚えていてほしいということ。そして、私がダメになってしまわないこと。また誰かを愛することに臆病にならないこと。誰かを愛するということは痛みを伴うこともあるけれど、それ以上に素晴らしいことだからと妻は言った。

そう話す彼女に「せっかくの結婚記念日にやめよう」と私は言って手を握り、青白い頬にそっとキスした。

「わかっているけど、この数年大変な思いをしたでしょ」

「レベッカと比べると何てことはないし、それに、もう前にも聞いたから」

そう、妻はもう何十回も自分がいなくなった後のことを口にしてきた。がんが両方の肺にも転移し、余命を意識するようになって3年。セカンドオピニオンを求めてがんセンターに行き、可能性のある治療法について聞いたが、専門家からは「すぐには何もありません」と言われただけだった。

レベッカとはテキサス州ヒューストンにあるロスコ・チャペルで結婚式を挙げた。手をつなぎ、黙ったまましばらく座っていた。抽象表現主義で知られるアーティスト、マーク・ロスコによる心揺さぶる紫色のキャンバスは、その後の私たちの結婚生活の一部となった。