日本で未承認の医薬品、国主導で臨床試験要請へ…海外からの導入を迅速化

AI要約

厚生労働省が、海外で承認されたが日本では未承認の医薬品の問題解決のため、国が主導して製薬企業に臨床試験を要請する新しい仕組みを設ける取り組みを開始する。

これにより、未承認の薬を迅速に削減し、命に影響が大きい病気における医療上の必要性が高い薬に焦点を当てることができる。

また、国内で試験が始まっていない医薬品に関しては、製薬企業に要請するだけでなく、公募も行い国内企業に試験を担う機会を提供する。試験費用の助成も行われる。

 海外で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」問題を改善するため、厚生労働省は、必要性の高い医薬品の臨床試験を日本で行うよう、国が主導して製薬企業に要請する新たな仕組みを設ける調整に入った。5日午後に開かれる有識者検討会に提案し、了承されれば今年度中に開始する。

 厚労省によると、昨年3月時点で、欧米で承認されているが日本では未承認の医薬品は143品目ある。日本での承認申請には、薬の有効性や安全性を調べる臨床試験を国内で行う必要があるが、86品目で始まっていなかった。

 こうした未承認の薬の数を迅速に削減するため、厚労省は、国内で未承認となっている薬を定期的に把握する取り組みを始める。あわせて、〈1〉学会の考え〈2〉臨床試験に向けた動き〈3〉対象となる患者数――などの調査を行う。

 その上で有識者検討会で議論し、命に関わり生活への影響が著しい病気の薬で「医療上の必要性が高い」と判断された場合は、厚労省が製薬企業に、日本で臨床試験を行うことなどを要請する。

 国内で試験が始まっていない86品目のうち、米国などの新興企業の製品が48品目を占めるが、こうした企業は日本に支社がなく、日本市場への進出も計画していないことが多い。厚労省は、こうしたケースでは公募を行い、主に国内企業が試験などを担うことを想定している。要請や公募に応じた企業には、試験費用の助成などを行う。

 これまでも学会や患者団体が要望した場合に、企業に要請する仕組みはあったが、海外での薬の承認状況の把握に時間がかかるという課題があった。厚労省は、ドラッグロスの拡大を防ぐため、国が主導する、より迅速な仕組みが必要だと判断した。