ふるさと納税に制度欠陥…仲介サイトの独自Pが自治体には負担、返礼品の魅力で偏る寄付金

AI要約

総務省がふるさと納税制度の一部見直しを発表。来年10月から寄付と返礼品申し込み時のポイント付与が禁止される。

ふるさと納税の目的は税収格差の是正であり、ポイント付与が自治体負担や利用者獲得競争を招く問題がある。

ふるさと納税全体の課題として、経費削減、返礼品競争抑制、地域間の寄付金偏りなどが指摘されている。

ふるさと納税に制度欠陥…仲介サイトの独自Pが自治体には負担、返礼品の魅力で偏る寄付金

 総務省が見直すと発表したのが、ふるさと納税の一部制度について。自治体への寄付と返礼品を仲介サイトで申し込む際の独自ポイントの付与が、来年10月から禁止されることになる。仲介サイトから付与されるポイントが、一部で自治体負担になっているだけでなく、過度な利用者獲得競争を招いているためだ。

「ふるさと納税の目的は本来、人口が集中する都市と地方の税収格差の是正であって、仲介サイトを儲けさせる制度ではありません。寄付金からの手数料で潤っている仲介サイトが、ポイントを自治体に負担させている点などが問題視されていました」(消費経済アナリスト・渡辺広明氏)

 2023年度は、寄付総額が全国で1兆円を超す見通しだ。金額が年々増え続ける中、ふるさと納税の欠陥はポイント負担の問題だけではない。

 総務省は23年10月に、ふるさと納税にかかる経費を寄付額の5割以下にする厳格化を通達している。6月24日に発表された「2023年度ふるさと納税実態調査報告書」によると、ふるさと納税が抱える課題や今後の展望として、経費5割基準への対応、事務負担の増加や送料負担、過度な返礼品競争の抑制、魅力的な返礼品開発などが挙げられている。

「過去にあったアマゾンギフト券やその自治体に全く関係のない商材で寄付金を獲得するのは邪道で、こうした行き過ぎたやり方は是正されています。しかし、寄付の目的が自治体への興味や支援より、お得な返礼品である状況に変わりはありません」(渡辺広明氏)

 毎年、宮崎県都城市や北海道の紋別市、根室市など、牛肉や魚介などが豊富に取れる産地に寄付金が集中している。

「ホタテやカニ、牛肉など名産品のある自治体にどうしても寄付金が偏りがちですが、地場のものを活用して寄付を募るため、不公平感が出てくるのはある程度仕方ありません。これから地方は衰退していく一方のため、条件が恵まれていない自治体も、これをきっかけに魅力的な返礼品の開発や地元のアピールに知恵を絞るしかないと思われます」(渡辺広明氏)

 一方、ふるさと納税による税収流出が著しい東京23区や横浜市、名古屋市など大都市圏の自治体からは不満の声が聞かれる。さらに、控除対象になる収入に上限が設けられていないため、高所得者優遇の是正を求める声もある。ふるさと納税が本来の意味で地方の活力となる日は来るのか。