長生きしたけりゃ最後は噛む力(4)「口の衰え」がフレイルを招く

AI要約

最近よく耳にする「フレイル」とは、加齢による心身の衰えや要介護リスクを指す言葉であり、口から始まるオーラルフレイル予防が重要である。

口の衰えを放置せず、早期発見、早期治療を行うことでフレイルや要介護のリスクを軽減できる。日本顎咬合学会の提言や予防方法には、口腔ケアの重要性やあいうべ体操、摂食機能療法が挙げられる。

口の健康は健康寿命の延長につながる重要な要素であり、正しいケアや治療を行うことで生活の質を向上させることができる。

長生きしたけりゃ最後は噛む力(4)「口の衰え」がフレイルを招く

 最近よく耳にする「フレイル」という言葉をご存じでしょうか? 簡単にいえば、加齢により心身が衰え、病気や要介護になりやすい状態、健康と要介護の中間の状態をいいます。

 体だけでなく意欲の低下や人との付き合いも減っていきますが、フレイルは正しい対策をとれば元に戻すことができ、フレイル予防は要介護の予防になるのです。

 フレイルは、まず口から始まります。「オーラルフレイル」です。

「口の働きが衰え、噛んだりしゃべったりする力が低下すると、栄養不足を招き、体力の衰えや免疫力、意欲の低下を招きます。ひきこもりになる人もいて、ますますフレイルが進み、いずれは要介護になってしまいます」

 日本顎咬合学会の金沢紘史次期理事長は、フレイルを防ぐにはオーラルフレイル対策が重要と強調します。

 口の衰えを放置せず、早期発見、早期治療をすればフレイル、ひいては要介護予防になるというわけです。来年から実施予定の「国民皆歯科健診」も、オーラルフレイル対策の一環といえます。

「オーラルフレイル予防には毎日、自分で行う口腔ケアも大切です。正しい方法を歯科衛生士に教えてもらうとベスト。間違った歯磨きは汚れを十分落とせず、かえって歯ぐきを傷つけてしまいます」

 日本顎咬合学会の俵木勉監事はこう言います。

 俵木監事に歯磨きのコツを教えてもらうと--。

 歯ブラシを軽く持ち、歯と歯肉の間に45度の角度であてて、軽く小刻みに磨くのが基本とのこと。歯がなくとも歯ブラシで歯ぐきをマッサージするだけでも歯ぐきが刺激されて脳が活性化し、口腔内の血行もよくなるそうです。

 また、口を鍛える訓練として「あいうべ体操」も効果的とのこと。方法は--。

 ①口を大きくアーと開ける。②次にイーと思い切り横に広げる。③口をウーの形にして唇をとがらせる。④最後にベーと言い舌を思い切り突き出す。

 これを毎食後1~2分、声を出して行うといいそうです。さらに、ガムを噛むのも咀嚼力を高める助けになるとのこと。

 病気などで胃ろうや人工栄養になり、口から食べられなくなった人には「摂食機能療法」という治療法があります。あまり知られていませんが、保険診療で行え、脳卒中の後遺症で舌や口がマヒして食べられなくなった人、のみ込みができなくなった人などが対象です。この治療で回復した人がこれまで数多く報告され、口から食べることで回復が早まることは医療や介護の現場ではよく知られています。噛む効用はリハビリでも発揮されているのです。

 口の健康は食べるという生きる基本を支えています。健康寿命を延ばす秘訣は、口の健康からといってもいいでしょう。=おわり

(医療ジャーナリスト・油井香代子)