碓氷峠のめがね橋はなぜいまでも人を惹きつけるのか【キムタクドラマBelieveを土木視点で見る】

AI要約

碓氷峠にあるめがね橋は、明治時代の先端土木技術が息づく鉄道橋遺構であり、魅力的な観光スポットである。

国鉄信越本線のために建設されためがね橋は、短期間で完成した偉業であり、設計技師のイギリス人が関わったことで特徴的な構造が生まれた。

土木フォトライターによる解説では、当時の技術水準を考えると、めがね橋の建設は驚異的な成果であったことが理解できる。

 群馬県と長野県の県境にある碓氷峠(うすいとうげ)。ここにあるレンガ製の鉄道橋遺構「めがね橋」(碓氷第三橋梁)は、有名な観光スポットであり、迫力ある写真が撮れる“映えスポット”でもある。

 テレビ朝日のドラマ「Believe―君にかける橋―」の最終回(第9回、2024年6月20日放送)でも、ラスト直前にめがね橋が重要な役割を担って登場した。キムタク演じる主人公狩山陸が妻玲子(天海祐希)に、橋のすばらしさを力説していた。

 めがね橋がなぜいまでも多くの人を魅了するのか、土木の視点から読み解いてみたい。

 (牧村あきこ:土木フォトライター)

■ 明治中期の最先端土木技術がいまも残る

 めがね橋(碓氷第三橋梁)は、高崎(群馬県高崎市)と直江津(現新潟県上越市)を結ぶ国鉄信越本線(当時)のための橋梁の一つ。1891年(明治24年)に着工し、1893年(明治26年)に竣工した。碓氷峠という難所での工事でありながら、非常に短期間で完成させるという偉業だった。

 「魅せる土木」を提唱し、Webサイト「土木ウォッチング」やFacebookページ「Discover Doboku」を運営する吉川弘道氏(東京都市大学名誉教授)に、めがね橋の持つ価値を解説していただいた。

 吉川弘道氏(以下、吉川):当時の鉄道土木の最先端技術を知ることができる、我が国屈指の鉄道遺構です。最大支間60フィート(約18.3m)、66.7パーミル(6.67パーセント)の急勾配、高さ31m、これらすべてが当時の設計施工技術で竣工したことを強調したいと思います。

 ――相当高い技術だったんですね。

 吉川:ある橋梁エンジニアが「いま造れって言われても、どうしたものか。構造設計は設計ソフトで可能だが、施工法や建設費は思いもつかない」とつぶやいていました。

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 必要な橋梁やトンネルを碓氷峠に造るために、イギリス人の設計技師が招聘(しょうへい)された。このため、めがね橋やトンネルのレンガは、長短が段違いに積まれる“イギリス積み”が用いられている。

 次の写真は、めがね橋の軽井沢側にある6号トンネル内部の様子だ。レンガの間の目地を盛り上げる“山型目地”で仕上げられている。