中国的伝統濃い台湾に残る日本統治の遺物 台湾有情

AI要約

中国当局は、台湾の新総統の「台湾独立史観」を非難する一方、台湾の就任式は中国的伝統が濃く、中華文化の色彩が強い。

台湾の脱中国化を訴える一方、道路の名称や建物の起源など、日本統治時代の影響が現代に残っている。

過去の歴史が現在の台湾に影響を与えており、中国ナショナリズムの手法も半植民地時代の遺産として見ることができる。

中国当局は、5月20日に就任した台湾の頼清徳総統が「台湾独立史観」を宣揚し、「脱中国化」を図っていると非難している。しかし皮肉なことに、台湾の総統就任式は、中国共産党の式典以上に「中国的伝統」の色彩が濃いものだ。

「中華民国の璽(じ)を授ける-」。就任式では、歴史的に天子(皇帝)の印章を意味する「璽」を新総統に手渡す儀式もあり、司会者の口上はどこか時代がかっていた。自らを中華文化の正統な継承者と自負する国民党統治時代の名残だろう。

台湾の「脱中国化」という点で言えば、台北の道路の名称は今も「長春」路や「南京」東路など中国各地の地名が多い。大戦後の1947年、「脱日本化」のために命名された。

ただ多くが国民党政府に上書きされたとはいえ、「板橋」「松山」など日本由来の地名も一部残っている。就任式が行われた総統府は日本統治時代に建てられた台湾総督府の庁舎。日本時代の下地がしばしば顔を出す。

ちなみに中国各地の地名を一都市の道路の名称に使うやり方は、中国国内でも一般的だが、1862年に上海の英国領事が租界で導入したのが起源とされる。

台湾にも根付く「中国ナショナリズム」の権化のような手法が、実は半植民地時代の〝遺産〟なのだから、歴史は一筋縄ではいかない。(西見由章)