「情けは人のためならず」は科学的に正しい…見知らぬ他人の幸せを願うことが自分の幸福につながるワケ

AI要約

心理学の実験によると、他人の幸せを願うことで自分の幸福度が向上することが確認されている。

災害支援や他人への思いやりが幸福感に繋がることを説明。

他人の幸せを願うことはハッピーアクションになり、脳は利他的な行動を取ることで生存競争を勝ち抜くと理解している。

どうすれば幸福な人生を送れるのか。明治大学の堀田秀吾教授は「心理学の実験では、見知らぬ他人の幸せを願うことで自分の幸福度が上がることがわかった。『情けは人のためならず』は科学的に正しい」という――。

 ※本稿は、堀田秀吾『世界の研究101から導いた 科学的に運気を上げる方法』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■不幸なニュースに無力感を感じたらどうするか

 「情けは人のためならず」ということわざがあります。

 これは、「人にかけた情けは巡り巡って自分に返ってくる」という意味ですが、私たちのご先祖様は、「人のためになること(向社会的行動)をすると、自分のためになる」とどこかで気づき、大切なこととして語り継いできたわけです。

 みなさんの中にも、令和6年能登半島地震の災害支援金などに寄付をされた方もおられることと思います。

 しかし、今回の地震のようなあまりに被害が大きいものだと、寄付をしても、すぐに事態が好転するわけではないので、心が晴れずにモヤモヤしてしまいがちです。

 国外を見ても、本当に酷い出来事ばかり……。

 今、社会に山積するさまざまな問題に対して、自分にできることをひとまずやって、そのあと何もできずに苦しんでいる――そんな方も多いと思うのですが、一つお伝えしたいのが、「心を寄せるだけでいい」ということです。

■心を寄せるだけでも「何かしている」ことになる

 どうしてもニュースは風化してしまうので、新しい大きな災害や紛争が起きると、そのニュースが増えて、まだ復興していない災害の被災地や、紛争が続いている地域のことを忘れてしまいがちです。

 しかし、覚えてさえいれば、今は余裕がなくても、また少し懐具合がよくなったら、再び寄付することだってできます。

 覚えていること、心を寄せることさえできれば、それだけで立派に「何かしている」ことになります。

 もちろん、災害や紛争のような大きな話に限らず、少し元気がなさそうに見えた友人に、仕事が忙しくて連絡はしていないが思いを寄せている、といった話でも同じことです。

■脳は「情けは人のためならず」の正しさを理解している

 ――と、ここまでは、「向社会的行動の捉え方、枠組み」的な内容になってしまいましたが、この話も、ちゃんと幸福度に繫がります。

 というのも、「他人の幸せを願う」だけでもハッピーアクションになるのです。

 アイオワ州立大学のダグラス・A・ジェンタイルらは、被験者496名に大学内の建物の周囲を12分間歩いてもらい、その間、目に入る見知らぬ人たちについて、次の4グループに分けて、それぞれの内容を一所懸命に考えてもらいました。

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(1)彼らが幸せになることを心の底から願う

(2)彼らと共有できる希望や感情について考える

(3)彼らと比べて自分が恵まれているか考える

(4)彼らの衣服やアクセサリーについて考える

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 すると、グループ(1)の被験者は、不安感が減少し、幸福感や共感力が向上し、思いやりや連帯意識が高まるなどの結果が出たのです。

 これもやはり、進化心理学で説明できる現象です。

 脳は“情けは人のためならず”が正解だと理解している。

 つまり、利他的な行動をすると幸福感を覚えるようになれば、生存競争を勝ち抜きやすいと認識しているわけです。

 だから、他人の幸せを願うことで、自分も幸せな気分になる。

 この研究で注目するべきは、「他人の幸せを願う」がハッピーアクションになっている点です。

 お金を使うことほど、直接的な影響は及ぼせないし、無力感に苛まれることもあるでしょう。

 それでも、少なくとも脳は、心を寄せるべき何か/誰かのことを忘れず、思い続けるだけでも、幸福度が上がるアクションと認識しているわけです。