【料理家が忘れられない宿】ウー・ウェンさんの「おいしい宿」小さなことの丁寧な積み重ねに感動

AI要約

料理家のウー・ウェンさんおすすめ、小さなことの丁寧な積み重ねがおいしい「MARUYO HOTEL」は和魂洋才の空間作りや古今の境のない美術品が魅力。

夕食は桑名名物の蛤をシンプルに調理し、蒸した野菜にソースをかけた前菜など、調理センスが光る献立。

朝食は近所のパン店の焼き立てパンや搾りたてのオレンジジュースが提供され、丁寧なサービスが印象的。

【料理家が忘れられない宿】ウー・ウェンさんの「おいしい宿」小さなことの丁寧な積み重ねに感動

日々、献立を研究する料理家のみなさんが、実際に泊まって心に残った宿を教えていただきました。宿の主人と料理人が地元の食材を探し回り、味わいを最大限に引き出した、まさに"ご馳走"。そんな口福の記憶を刻みたい宿と、そこで出会った滋味。彼女たちの言葉のなかから、「記憶に残るおいしさ」に対する多くのヒントが見つかります。

今回は、料理家のウー・ウェンさんおすすめ、小さなことの丁寧な積み重ねがおいしい「MARUYO HOTEL」です。

築70年の古家を改装した一棟貸しの「MARUYO HOTEL」は、和魂洋才の空間作りのディテールや古今の境のない美術品の数々など、オーナーの美意識がすみずみにまで行き届いた宿。

料理も同様で、夕飯は桑名名物の蛤を昆布出汁でさっとゆがいたり、焼き蛤にしたりと究極のシンプル。蒸した野菜にソースをかけた前菜など、一見、簡単に見えて最も調理センスが問われる献立です。

朝食は、近所のパン店がクロワッサンなどを焼いていますが、袋に入れずに、布巾を掛けて運んだほうがおいしいからと、木箱に入れたまま運ばれます。テーブルには焼きたてのパン、そしてゲストが席についてから搾り始めるオレンジジュースの美味……。

小さなことの丁寧な積み重ねで、「おいしい」ができる、私の料理ポリシーとも共通する部分があり、いつまでも記憶に残る宿です。(談)

〈写真〉初夏にかけて身がふくらみ、旨みが増す蛤。新鮮かつ最上級の蛤を仕入れ、シンプルに食す。〆は蛤から出た出汁で作る雑炊。

目前の揖斐長良川を眺めながらの朝食風景。オレンジ2個がひとり分のジュースになります。ガラスは横山秀樹作、陶器は内田鋼一作など。

ゆでる、蒸すなどシンプルな野菜料理が体に優しい。

明治の洋館の雰囲気漂う寝室。館内は現代美術と骨董が点在します。

【MARUYO HOTEL】

三重県桑名市船馬23

一泊2食付き2名1室の1名料金66,000円~(サ込)

IN15時 OUT11時

一棟貸し切り

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ウー・ウェンさん●中国・北京生まれ。1990年に来日して以来30年、ウー・ウェン クッキングサロンを主宰し、中国の家庭料理とともに文化を伝える。『ウー・ウェンの 蒸しもの お粥』(高橋書店)など著書多数。

撮影=高嶋佳代 編集・文=吉岡博恵(婦人画報編集部) 『婦人画報』2024年6月号