富士通はビジネスモデルを変えられるか

AI要約

富士通がビジネスモデルの転換に注力し、新たなビジネス「Fujitsu Uvance」が注目されている。

同社は2030年までにデジタルサービスによるポジティブな影響を目指し、中期経営計画を策定している。

Uvanceが取り組むフロー型からストック型への転換が注目されており、将来の成長に期待が寄せられている。

富士通はビジネスモデルを変えられるか

 富士通がビジネスモデルの転換に注力している。その新たなビジネスの象徴が「Fujitsu Uvance」(以下、Uvance)だ。2021年のスタート以来これまで着実に成長しつつあるが、果たして将来の同社ビジネスの「大黒柱」となり得るか。

フロー型からストック型への転換はなるか

 「当社は2030年に『デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニー』になることを目指している。そこからバックキャストして現在の中期経営計画(2023~2025年度)を立てて推進中だ。この先の持続的な成長に向けたビジネスモデルを構築する中期経営計画とも位置付けている」

 富士通で代表取締役副社長 最高財務責任者(CFO)を務める磯部武司氏は先頃、同社が投資家やアナリスト向けに開いた「IR Day 2024」でこう切り出した。ネットポジティブとは、「財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイング(心身の健康や幸福)の向上に取り組み、テクノロジーとイノベーションによって社会全体へのインパクトをプラスにする」ことを意味する。

 同イベントでは、同社の主力事業であるサービスソリューション分野からUvanceとともに「モダナイゼーション」「コンサルティング」「テクノロジー」の4つの注力領域について、IR向けの説明が行われた。

 その中で、筆者が注目したのは、富士通がフロー型からストック型へビジネスモデルの転換を図るために注力しているUvanceの動向だ。果たして、同社は本当にビジネスモデルを変えられるのか。その視点で、説明があった興味深い情報を取り上げて考察したい。

 磯部氏はまず、サービスソリューション分野の売上収益(売上高に相当)の推移と事業ポートフォリオのイメージについて、図1を示して説明した。

 それによると、2025年度(2026年3月期)のサービスソリューションの売上計画は2兆4000億円で、そのうち従来型ITサービスが1兆4750億円で約6割、Uvanceが7000億円で約3割、モダナイゼーションが2250億円で約1割、コンサルティングがそれらの内数として1800億円という内訳だ。そして、これらの事業ポートフォリオの割合と関係性を示したのが右側の図だ。同社のビジネスモデルの転換は、この図においてUvanceの面積が多くを占めていくことを指す。

 そのUvanceの事業責任者を務める執行役員副社長 最高執行責任者(COO)の高橋美波氏は、Uvanceのターゲット市場について、「Uvanceはデジタルトランスフォーメーション(DX)にとどまらず、サステナビリティートランスフォーメーション(SX)の市場を積極的に創造していくことも目的としており、社会課題の解決と企業課題の解決を両立させていくことが重要だと考えている。この2つの命題を同時に達成するカギとなるのは、企業間や業種間のデータの流通と活用にあると見ており、この領域に大きな市場が形成されていくと考えている」と説明した。

 高橋氏によると、そうしたターゲット市場の規模や成長率、売上収益やシェアについて、同社では2025年度のグローバルおよび国内の市場での目標として図2に示した数字を掲げている。そして、グローバル市場では「グローバルプレイヤーとしての地位を固めて2030年までにトップ3」、国内市場では「圧倒的なポジションを確立してトップシェア」を目指す構えだ。

 こうした目標に向けた勝算について高橋氏は、「Uvanceのターゲット市場は業種や業務に特化した領域へのきめ細かい対応が求められるので、外資系のハイパースケーラーなどには入り込みづらいだろう。当社は市場領域を創造していくフロントランナーとして、お客さまのニーズに応じたソリューションを積極的に展開していきたい」と意気込みを語った。