デザインセンスゼロでも作れる! プレゼンスライドの作成時間を10分の1にする生成AIの活用法

AI要約

AIを活用したプレゼンスライド生成サービスの活用法について解説。テンプレートを使う際の課題や、情報の準備方法、他のAIサービスとの組み合わせ方を紹介。

構成案の作成や情報の入力を自分で行う必要がある点を強調。AIを効果的に活用するためには、プロンプトに適切な情報を入力することが重要。

さまざまなプレゼンスライド生成AIサービスが存在し、それぞれの特徴や利点、利用方法について比較。様々なサービスを組み合わせることで効率的にプレゼン資料を作成できる。

デザインセンスゼロでも作れる! プレゼンスライドの作成時間を10分の1にする生成AIの活用法

 本連載「柳谷智宣のAI ウォッチ!」では、いま話題のAI(生成AI)を活用したサービスを中心に取り上げていく。基本的に、前編ではまねるだけですぐに試せる「つかいかた」を解説、後編では同種のサービスも例にビジネスシーンでの活用方法や「AIトレンド」に迫っていく予定。今回は、プレゼンスライド生成AIサービスの活用法を取り上げる。

 プレゼンのスライドは、講演であれば視聴者の満足度を左右するし、営業であれば契約の獲得に影響を与える重要なものではあるが、作成するのにとても時間がかかる。伝えたい情報は自分が持っているのだから、もっとさくっと作ってしまいたいと思うのも当然だろう。

 そのためにテンプレートというものがあるのだが、必ずしも伝えたいコンテンツがその形式に当てはまるとは限らない。そして、自分で要素を追加したり減らしたりすると、途端にデザインが崩れてしまう。筆者はデザインセンスがないので、スライドの作成に苦労していたが、生成AIが登場してからは随分助けられた。

 今回は、プレゼンスライドを作成してくれる生成AIサービスの活用法を紹介しよう。

■ 肝になる情報を自分で用意するところは変わらない

 前編で紹介した「Gamma」はプレゼンスライドだけでなく、Webサイトやドキュメントも生成できる。日本語に対応しており、言語の選択肢に、日本語の「だ・である」調と「です・ます」調が別に用意されているのもありがたい。欲しいスライドの内容を1文入力するだけで、最大30枚のスライドを作ってくれるのは圧巻だ。

 1年ほど前からスライド生成AIがちらほらと出ているが、当時のサービスは、技術的にすごいのは伝わるがビジネスでは使えないレベルだった。しかし、短期間で性能が大幅に向上し、いまではビジネスで使えるレベルのスライドを生成できるようになっている。実際に、筆者は「Gamma」で作ったスライドを1,000人以上が視聴するイベントの講演でも使っている。

 しかし、当たり前だが、プロンプトに1文を入れてビジネスに使えるスライドのセットが生成できるわけがない。

 まともなスライドを作るには、中に入れ込む情報を自分で用意する必要がある。あらかじめ構成案などを作成し、プロンプトにまるっと入力することで、ある程度出力をコントロールできるようになる。この作業を「Gamma」上で行うのは手間がかかるので、構成案はチャットUIの「ChatGPT」や「Claude」「Gemini」などで作るほうがよいだろう。

 「ChatGPT」だとしても、内容のないプロンプトからはふわっとした中身のない構成案ができあがってしまう。構成になっていなくてもよいので、箇条書きで入れ込みたい内容を全部プロンプトに入れて構成案を作ってもらえばよい。

 「Gamma」のような賢いAIを搭載しているサービスなら、その構成案を入力することで、狙った内容のスライドを構成できる。もし、AIでデザインの生成のみをするようなサービスであれば、中身のテキストまで「ChatGPT」で作ってしまう方がよいだろう。

 これは営業用のスライドを作る際も同じだ。製品やサービスについての情報を自社の資料からコピペしてスライドの内容を生成してもらえばよい。営業用のスライドにどんな内容が必要なのかわからないなら、それも「ChatGPT」に聞けばよい。その後で、要素を自社用に差し替えれば完成だ。

 ただし「ChatGPT」も「Gamma」も、最新情報や金額などの数字を扱うのは苦手だ。そのため、例えば「ネット詐欺被害額の推移」などとプロンプトに入れても、「被害額と被害者数は年々増加傾向にあります」くらいしか書いてくれない。この程度は自分で修正してもよいのだが、せっかくなので生成AIでさらに作業を進めよう。

 「Perplexity」は検索特化の生成AIで、最新情報を検索し、その結果を元に出力してくれる。「ネット詐欺被害の規模の推移を教えて」と入力すれば、複数のサイトを検索し、金額や前年比などをまとめてくれる。参照したソースのURLも付いているので、裏を取るのも簡単だ。

 「Gamma」の差し替えたい文章を選択した上で、AIのパネルを開き、「以下の内容を40文字でまとめて」とプロンプトを入力。その後に「Perplexity」の出力をコピペすれば、スライドに狙った文章を入れることができる。このAIとチャットしながらスライドの中身を直接いじれるのが「Gamma」のすごいところ。「PowerPoint」も生成AIに対応しているが、自由度が低いのでまだ使いにくいのだ。

■ WordやPDF、Webページを入れてスライドを作ってもらう

 既存の情報をまるっと渡してスライドを生成してもらうこともできる。

 例えば、Word文書があるなら、そのファイルをアップロードするだけでスライドにしてくれる。基本的にその文書内の情報を使うので、間違った内容になる可能性も低い。

 試しに英語の文書を渡し、日本語のスライドにさせてみたが、まったく問題なし。生成された画像はチェックする必要があるが、そのまま利用できるレベルだ。悪用されるのが心配になる。

 URLを渡して、そのWebページに記載されているテキストを元にスライドを生成することもできる。会社概要のURLを入力すれば、会社案内のスライドを作ってくれるのだ。元情報はブログでも、Notion、Googleドキュメント、PDFでもなんでもよい。この情報次第で、スライドのクオリティが左右されるということは覚えておこう。

 生成AIのプロンプトにしっかりとした情報を入れ込むことで、期待通りのスライドを作ってくれるようになる。構成案や見出し、本文、データ、画像、デザインなど多くの工程で生成AIが活躍するので、賢く使いこなしたい。そうすれば、スライド作成にかかる作業時間は10分の1にだって短縮できるだろう。罪悪感を覚えるほどあっという間に作れてしまうのだ。その分、AIに渡す情報を充実させたり(ただし個人・機密情報の入力には注意)、生成されたスライドをブラッシュアップする作業に集中すればよいだろう。

 繰り返しになるが、1行のプロンプトを入れて30枚のスライドを生成することも可能だが、見る人が見れば内容がないことはすぐにわかる。生成AIはスライドを作る作業を効率化させるもので、内容は自分で用意しなければならないということは必ず覚えておこう。

■ 他にもたくさんあるプレゼンスライド生成AIサービス

 「Gamma」は海外サービスのため、Google Fontsを使っており、PC側にフォントがインストールされていないと文字化けすることがある。また、スライドを作成するためにカードサイズに設定しても、コンテンツによっては勝手にオーバーしてしまう。後で調整は可能だが、16:9のサイズに収める設定がないのだ。デザインもイマドキというわけでもないし、日本のビジネスシーンにマッチしないこともある。

 このあたりが気になる人にお勧めしたいのは「イルシル」だ。国産のスライド生成AIサービスで、日本語に特化したスライドデザインテンプレートを1,000種類以上用意している。ChatGPTを搭載しており、「Gamma」のようにプロンプトからスライドを生成できる。アイコンやチャートなどのパーツが充実しているのもポイントだ。細部を手動で仕上げられる人なら、クオリティの高いスライドを作れるだろう。

 「Microsoft 365 Copilot」(Copilot for Microsoft 365)にも期待したいが、前述の通り、まだ「PowerPoint」で「Gamma」や「イルシル」のようなことはできない。作成時の指示がほぼ効かない上、チャットによる修正もできないのだ。Word文書からの変換はそこそこ賢いのだが、その後のブラッシュアップができないのは困る。利用料金が「ChatGPT」や「Gemini」よりも高額なのだから、なるはやの進化を期待したいところだ。

 以上のように、生成AIを組み合わせれば短時間でプレゼン用のスライドを作成できるようになる。

 圧縮できた時間を価値を生み出す他の作業に費やせば、業務効率アップにつながる。PowerPointでゴリゴリ作っていたスライドと雰囲気は変わるかもしれないが、この時短効果は大きい。ぜひ、次のプレゼン資料はスライド生成AIで作ってみてほしい。

■ 著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/