ガートナー、「生成AIのハイプ・サイクル:2024年」を発表--2027年までに生成AIの40%がマルチモーダルに

AI要約

生成AIの進化と将来展望について、ガートナーの予測とアナリストの見解を紹介。2027年までにマルチモーダル生成AIソリューションが40%を占めると予想される。また、マルチモーダル生成AI、オープンソースのLLM、ドメイン固有の生成AIモデル、自律エージェントなどの技術について解説。

生成AI技術の進化により、人間とAIの連携が強化され、様々な分野での応用が可能となる見通し。また、生成AI市場での競争が激しくなりつつあり、企業が技術や戦略をアップデートする必要がある。

生成AIの進化はまだ序盤であり、今後はヒューマノイドやスーパーインテリジェンスへの進化が期待される。企業は将来に備え、リアリティを重視した戦略の構築が必要とされている。

 ガートナージャパンは9月10日、「生成AIのハイプ・サイクル:2024年」を発表した。2027年までに生成AIソリューションの40%が、テキスト、画像、音声、動画などのデータを一度に処理する「マルチモーダル」になるとの見解を示した。生成モデルのマルチモーダル化は、人間とAIのやりとりを強化し、対応技術の差別化につながるという。

 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのErick Brethenoux氏は、「生成AI市場において、複数のモードでネイティブに学習したモデルが台頭し始めている。これにより、異なるデータストリーム間の関係を把握しやすくなるだけでなく、あらゆるデータタイプやアプリケーションに生成AIのメリットを拡張できる可能性がある。また、環境に関係なく、人間がより多くのタスクを実行できるようAIがサポートすることが可能になる」とコメントする。

 同ハイプ・サイクルにおいて、「マルチモーダル生成AI」は「オープンソースの大規模言語モデル(LLM)」とともに、「早期に採用することで顕著な競争優位性と市場投入までの期間短縮をもたらす可能性があるテクノロジー」として取り上げられている。その上で、両技術とも今後5年以内に組織に大きな影響を及ぼす可能性を秘めているとしている。

 また、10年以内に主流になると予測される生成AI技術の中では、「ドメイン固有の生成AIモデル」と「自律エージェント」が有力候補として挙げられている。

 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのArun Chandrasekaran氏は、「テクノロジーやベンダーが入り乱れ、目まぐるしく変化するエコシステムが原因で、生成AIエコシステムのかじ取りは企業にとって極めて困難な作業となり続けるだろう。業界再編の始まりとともに、生成AIは幻滅期に入っている。ブームが一段落すれば、今後数年間は急速なペースで機能が進歩し、さらなるメリットを得られる可能性がある」と述べる。

 上述した4つの生成AI技術について、ガートナーは次のように説明する。

マルチモーダル生成AI

 マルチモーダル生成AIは、通常では実現不可能な新しい機能を実現することで、エンタープライズアプリケーションに変革的なインパクトをもたらす。このインパクトは特定の業界やユースケースに限定されるものではなく、AIと人間の間のあらゆる接点への適用が可能である。現在、多くのマルチモーダルモデルは2~3つのモードに限定されているが、今後数年のうちにさらに多くのモードが組み込まれるようになる。

オープンソースのLLM

 オープンソースのLLMは、商用アクセスを民主化し、開発者が特定のタスク/ユースケース向けにモデルを最適化できるようにすることで、生成AIの導入から得られる企業価値を加速させるディープラーニングのファウンデーションモデルである。さらに、モデルの改善と価値の向上という共通の目標に取り組んでいる企業、学術機関、およびその他の研究機関の開発者コミュニティーにアクセスできるようにする。

ドメイン固有の生成AIモデル

 ドメイン固有の生成AIモデルは、特定の業界、ビジネス機能、またはタスクのニーズに最適化されている。企業内でユースケースの整合性を改善すると同時に、精度、セキュリティ、プライバシーを向上させ、よりコンテキストに沿った回答を提供できるようにする。これにより、汎用モデルの場合ほど高度なプロンプトエンジニアリングを使用する必要がなくなり、対象を絞ったトレーニングを通じて、ハルシネーション(でっち上げされた回答)のリスクを下げることができる。

自律エージェント

 自律エージェントは、人間の介入なしで、定義された目標を達成する複合システムである。さまざまなAI技術を利用して、環境におけるパターンを識別し、意思決定を行い、一連のアクションを実行し、アウトプットを生成する。自律エージェントは、環境を学習し続けることで性能が向上し、次第に、より複雑なタスクに対処できるようになる可能性を秘めている。

 日本で生成AIの領域を担当するディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏は、「生成AIの進化は、インターネットの進化と似ており、まだ2合目にある。その進化の過程において、全般的に生成AIは『過度な期待』のピーク期の下り方向にある。そこでは『想定以上にコストがかかっている』といった幻滅的な事象も発生している。そうした注意が必要なフェーズではあるが、生成AIはこれから、ヒューマノイドやあらゆるデバイスとアプリケーションへの組み込み、汎用人工知能、スーパーインテリジェンスに向けた進化が想定される。企業は、産業革命、AI共生時代が到来していると捉え、リアリティーを重視しつつ、将来に向けた顧客体験、ビジネスやITの在り方、従業員とAIとの関係を含む戦略を抜本的にアップデートする必要がある」との見解を示した。