「AmiVoice」が新プラットフォームを軸に議事録関連サービスを連携へ

AI要約

アドバンスト・メディアは、複数の議事録ソリューションを一元化したプラットフォーム「VoXT One(ボクストワン)」を発表、9月9日より提供開始する。

VoXT Oneは、同社製のAI音声認識エンジン「AmiVoice」を搭載する議事録サービスをワンストップで提供するプラットフォームで、要約機能の強化も進める。

プラットフォーム化の詳細や狙い、アドバンスト・メディアの事業戦略における位置づけについてレポートされている。

「AmiVoice」が新プラットフォームを軸に議事録関連サービスを連携へ

アドバンスト・メディアは、複数の議事録ソリューションを一元化したプラットフォーム「VoXT One(ボクストワン)」を発表、9月9日より提供開始する。

 アドバンスト・メディアは、複数の議事録ソリューションを一元化したプラットフォーム「VoXT One(ボクストワン)」を、2024年9月9日より提供開始する。

 

 VoXT Oneは、同社製のAI音声認識エンジン「AmiVoice」を搭載する議事録サービスをワンストップで提供するプラットフォームだ。提供開始に合わせて、各議事録サービスにおける要約機能の強化も進める。

 

 本記事では、プラットフォーム化の詳細や狙い、同社の事業戦略における位置づけについてレポートする。

 

“議事録のあらゆる悩みの解決”目指すVoXT One、生成AIによる要約機能も本格展開

 現在アドバンスト・メディアは、2つの議事録サービスを展開している。

 ひとつはスタンドアローン型の「ScribeAssist(旧名AmiVoice ScribeAssist)」。ローカルでの文字起こしが可能で、リアルタイムの音声入力と音声ファイルの双方に対応する。もうひとつは、クラウド型の「ProVoXT(プロボクスト)」。音声ファイルをアップロードすることで文字起こしが行われ、出力されたテキストはウェブ上で編集することも可能だ。

 

 スタンドアローン型とクラウド型、それぞれ強みは異なり、ポリシーでクラウド利用が難しい企業はスタンドアローン型を選択するなど、ユーザーのニーズに応じて選ばれてきた。加えて、地方自治体などで多いのが、会議の秘匿性などでサービスを使い分けるケースであり、これらの組織からはよりフレキシブルに利用したいという要望が挙がっていたという。

 

 このような状況を受け、今回発表されたのがVoXT Oneだ。ひとつの「VoXT Oneアカウント」で、契約するすべての議事録サービスが利用でき、サービス間のデータ連携も行われる。複数サービスを利用する企業や組織は、アカウントの管理やサービスの使い分けなどが容易になる。

 

 現時点でVoXT Oneに対応する議事録サービスは2つだが、今後も利用用途の異なるサービス、業界特化型サービスなどを追加していき、“議事録に関するあらゆる悩みを解決するプラットフォーム”を目指す。

 

 VoXT Oneに追加するサービスとして、現在同社が実証実験を進めているのは、地方自治体向けの「議会だより作成支援」および「答弁書作成支援」サービスだ。同社の議事録サービスは、地方自治体で810以上の利用実績を有しており、他業界に先んじて自治体向けに特化したサービスを拡充する狙い。

 

 また、VoXT Oneの提供にあわせ、ScribeAssist、ProVoXTのそれぞれで、生成AIを用いた要約機能を強化する。ScribeAssistでは、ベータ版として提供していたAI要約機能を正式提供開始、またProVoXTでは新たに「議事録エディタ」の機能を追加する。

 

 ScribeAssistの要約機能は、会議の文字起こしをワンクリックで議事録形式に要約してくれる機能。1ライセンスにつき、追加費用なしで月300万トークンまで利用できる。

 

 一方、ProVoXTの議事録エディタ機能は、ProVoXTによるクラウド上での文字起こし、もしくはアップロードした文字起こしを要約する機能だ。「要点まとめ」と「議事録形式」の2つの出力形式が選択でき、要約方法についても「すべてAIにまかせる」「議題ごとに要約する」の2つから選択可能だ。こちらは、利用量に応じた料金体系となり、10時間、150万トークンまでの利用で、1万3000円で提供される。

 これらのVoXT Oneの各サービスで展開される要約機能は、Azure Open AIで実装しており、VoXT Oneの提供から「GPT-4o」に対応する。

 

好調な音声認識事業、さらなる成長のためのプラットフォーム化の狙い

 アドバンスト・メディアは、1997年に創業、AI音声認識エンジンの「AmiVoice」を中核に、コールセンターから議事録、医療、建築、製造・小売まで、“声”を使う領域で事業を拡大してきた。

 

 ecarlateの調査予測によると、音声認識市場全体の売上は、2022年の1098億円から2027年には1950億円まで拡大するという。新型コロナウイルスを契機としたオンライン会議の浸透、ChatGPTを始めとする生成AIの登場により、ニーズの増大と技術の進化が著しい市場だ。

 

 市場の好調も受け、アドバンスト・メディアの2023年度の実績は、売上高(60億100万円)、営業利益(13億6700万円)共に過去最高を達成。特に、既存のビジネス領域における音声認識サービスの売上が前年度比で20%近く伸びているという。同社の取締役 事業本部長である大柳伸也氏は、「成長の大きな理由は、ストックビジネスの売上比率の向上。2017年頃からサブスクリプション型にモデル転換を始めており、特に、2019年末には50%前後であったVoXT(議事録・文字起こし)事業のストック比率は、2023年度末に95.2%まで達した。成長のためのビジネス基盤を築けている」と説明する。

 

 2024年度の目標は、売上高が70億円、営業利益が14億7000万円と、さらなる成長を目指す。そのために、販売・開発パートナーを強化して、生成AIとの連携を深めて付加価値を拡大していく。加えて進めるのが、主力事業における“プラットフォーム化”である。

 ユーザーの利便性向上とは別に、プラットフォーム化の狙いが2つある。ひとつは、多様なサービスを同一プラットフォームで用意することで、利用顧客を拡大すること。もうひとつが、個別サービスを開発・運用することによるリソース分散をなくし、音声認識エンジンや課金、アカウント管理などを共通化することで、開発スピードを迅速化することだ。

 

 その第一弾が、今回提供する議事録領域の「VoXT One」であり、今後も利用用途や技術領域で既存・新規サービスをまとめたプラットフォームを展開していく。大柳氏は、「ライセンス管理や同一アカウントでの複数サービスの利用といった利便性を提供するだけではなく、サービスもしくはプラットフォーム間でのデータ連携を進めることで新たな価値を見つけていきたい」と語った。

 

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp