脳波に着目して集中力を高めるウェアラブル「alphabeats」を試してみた

AI要約

alphabeatsはニューロフィードバックシステムを用いて脳をトレーニングするデバイスで、成果を上げるには時間と訓練が必要である。

プロのアスリートや一般ユーザーにもメリットがあり、アルファ波を活性化させることで集中力やリラックス効果をもたらす。

alphabeatsのトレーニング効果に関するプロアスリートや研究の事例を紹介しつつ、この技術が提供する可能性について考察されている。

脳波に着目して集中力を高めるウェアラブル「alphabeats」を試してみた

本記事の3つのポイント

「alphabeats」は本体価格が499ドル(約6万5300円)で、別途サブスクリプション料金がかかる。

詳しいガイダンスが得られ、トレーニング中の音楽を選択でき、集中力を鍛えることができる。

成果を出すにはかなりの時間と訓練が必要であり、トレーニング中は頭部にデバイスを装着し続ける必要がある。

 筆者はプロのアスリートではないが、幼い頃からスポーツに親しんでいる。カレッジフットボールの経験があり、20年以上ラグビーをしていて、普段からランニング、ボート漕ぎ、自転車、ハイキングなどで体と心を整えるよう努めている。また非常に競争心が強く、55歳になった今でも自分のパフォーマンスを高めたいと思っているため、ウェアラブル技術に強い関心がある。

 筆者はこの3カ月間、「alphabeats」のニューロフィードバッククシステムを使って脳をトレーニングしてきた。特定のイベント向けてのトレーニングや、長期間にわたるトレーニングを行ってきたわけではないので、具体的な個人データでその成果を示せるわけではない。その代わりこの記事では、自分の経験や、alphabeatsを使用しているプロアスリートの事例を紹介する。

 今回は主に運動能力に焦点を当てるが、脳をアルファ波が発生している状態にすれば、他の活動でも成果を高めることができる。alphabeatsのよくある質問のページでも説明されているように、アルファ波は、リラックスした覚醒状態や、創造性や、ストレスの軽減と結びついている脳波で、これが出ている状態は「フロー状態」とも呼ばれており、無関係な情報が抑制されて集中力が高まる。アルファ波は明晰な思考や最高のパフォーマンスを達成するために重要で、これが増えれば集中力が高まり、リラックスしやすくなり、精神の全般的な健全性が向上するなどして、特にアスリートに大きなメリットをもたらす。おそらく、軍の戦闘機パイロットや音楽家などの、精神の集中が必要な緊張を強いられる活動に従事する人たちもこのトレーニングから恩恵を受けられるだろう。

 alphabeatsのシステムは、専用のスマートフォンアプリとヘッドバンドの「BrainBit」から構成されている。このアプリは、トレーニングセッションを提供し、音楽を鳴らし、ユーザーやチームがニューロフィードバックトレーニングの効果を測るためのトレーニング結果を表示する。ヘッドバンドは、ユーザーの脳波を測定してBluetooth経由でスマートフォンに伝達するために使用される。

 ユーザーはこの技術に馴染みがない可能性が高いため、アプリを使い始めたら、まず一連の初期導入プログラムを受けなければならない仕組みになっている。最初に受けることになるのは、ユーザーの個人プロフィールを作成するための7つのセッションからなる基本プログラムだ。

 この基本プログラムでは、音楽を聴いたり、アニメーション映像を見たり、科学的裏付けのあるゲームをクリアしたりしながら、脳波の活動を体験することになる。例えばゲームの中にはサイコロを使ったものがあるのだが、このゲームには集中力が必要で、表示されたサイコロの数字だけでなく、濃淡も見分けて瞬時に反応しなければならない。

 基本プログラムを終えると、回復やリラックスのためのプログラムや、集中力向上プログラムに参加できるようになる。ただし、アルファ波が出ている状態に入れるようになるには、かなりの時間と練習が必要だ。

 筆者にとってニューロフィードバックトレーニングは初めての経験だったため、セッション中に何に集中すればいいのかと、いろいろと疑問を感じた。筆者は古いロックが好きなので、音楽にはこのジャンルを選ぶことが多いのだが、この手の音楽を聞くとたくさんの記憶が蘇るため、歌詞や思い出ではなくリラックスすることや精神集中に専念するのは難しかった。

 プロのアスリートにとっては、1位と2位の間にはごくわずかの差しかない場合が多い。思考の鋭敏さや集中力の違いが、その差となって現れてしまう状況も頻繁にある。The Sports Business Jounalは7月、alphabeatsを使っている米国の男子テニス選手、Austin Karjicek氏に関する記事を掲載した。Karjicek氏は2024年のパリオリンピックで男子ダブルスの銀メダルを獲得している。

 同氏はこの記事の中で、alphabeatsについて「自分の精神状態について、気づきを与えてくれたことには本当に感心した。自分はそれまでも、かなりそれが得意な方だった。アスリートが自分の身体についてよく把握しているのは当然のことだが、メンタル面では多くの選手に改善の余地があると思う。自分がメンタル面に注意を払おうとすると、試合中に自分の状態に対する認識に違いがあることに気付けた。実際、コートの外でも、それがさまざまな投資機会や金銭的な大きな決断などでも効果を発揮した」と述べている。

 アーチェリーも極度の集中力と冷静さを必要とするスポーツだ。アーチェリーのオランダ代表チームは、オリンピックに向けての準備段階で、alphabeatsの試験プログラムに参加した。その結果、alphabeatsを使った選手の70%近くが、自分の意思でアルファ波を出す能力を高めることができたという。その体験談についての記事全編が、LinkedInに掲載されている。

 また8月に発表された研究では、トップサッカー選手のパフォーマンスを計測して、alphabeatsのトレーニングが男女のサッカー選手に与えた影響を調べている。その結果、1対1のトレーニングだけでなく、グループでの脳のトレ―ニングにも効果があることが分かった。この研究では、これらのグループでアルファ波の活動が34%増加し、集中力とリラックスの向上につながったことが明らかになった。

まとめ

 アスリートは最高のパフォーマンスを発揮するために、肉体を完璧な状態にしようと努めている。alphabeatsは、ニューロフィードバック技術によって、精神状態と身体を連動させるトレーニングを可能にする。

 この技術から恩恵を受けられるのはトップアスリートだけではない。alphabeatsのシステムは、好きな音楽とアクティビティ中の脳波フィードバックを用いて脳をトレーニングし、脳にアルファ波が出ている状態で重要な場面で臨めるようにする。どのような人のトレーニングやパフォーマンスの向上にも役立つことを考えれば、499ドルという価格は手頃な値段だと言えるだろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。