「スターライナー」無人で帰還–決断までにNASAとボーイングが議論

AI要約

Boeingの宇宙船Starlinerが無人での帰還決定について、NASAとBoeingの意見の対立があった。

スラスターの故障によりStarlinerは有人飛行を断念し、無人での地球帰還が計画された。

NASAはリスクを理由に宇宙飛行士を搭乗させることを決定した。

「スターライナー」無人で帰還–決断までにNASAとボーイングが議論

米Boeingの宇宙船「Starliner」を無人で帰還させるという決断について、米航空宇宙局(NASA)とBoeingのあいだで賛否両論があったことが海外メディアのSpace.comで報じられている。

 6月に打ち上げられたStarlinerは初の有人飛行試験(Crew Flight Test:CFT)として、2人の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に送った。しかしヘリウム漏れやスラスターの故障により、宇宙飛行士を乗せての地球への帰還を断念した。

 NASAで商業乗員輸送プログラム(Commercial Crew Program:CCP)のプログラムマネージャーを務めるSteve Stich氏は「Boeingは、残りの飛行中のスラスターの劣化を予測するために作成したモデルを信じていた」と語っている。「この種の決定があるときはいつでも、部屋には緊張感があると思う」

 「NASAのチームはそのモデルを見て、いくつかの限界を感じた。それは、スラスターに信頼がおけるかどうか、そしてドッキング解除から軌道離脱燃焼までの劣化をどの程度予測できるかということだった」(Stich氏)

 Starlinerは結局、9月6日に宇宙飛行士を乗せずにISSを離れ、同月7日に地球に帰還する予定。StarlinerでISSに搭乗した2人の宇宙飛行士は、2人体制で打ち上げられる、Space Exploration Technologies(SpaceX)のISS宇宙飛行士輸送ミッション「Crew-9」として2025年2月に地球に帰還する予定だ。

 6月6日にISSとドッキングするときに、Starlinerに搭載された姿勢制御システム(Reaction Control System:RCS)のスラスター28基のうち5基に不具合が発生し、問題が生じたという。その後、何カ月にもわたる軌道上や地上での試験、モデリングが行われたが、根本的な原因である可能性のあるスラスターの過熱が断熱材の脱落につながる可能性があり、トラブルを起こさずに帰還できるという確証が得られなかった。

 NASAは最終的に、2人の宇宙飛行士をStarlinerに乗せるのはリスクが大きすぎると判断した。