夜空が変わっちゃう? 従来より5倍も明るいSpaceXの人工衛星

AI要約

SpaceXが進めるDTCプロジェクトによる明るい人工衛星群が天文学者の懸念を引き起こしている。

DTC衛星は高度が低いため通常の衛星よりも明るく、観測に悪影響を及ぼす可能性がある。

SpaceXと天文学者は対話し、素材や設計の変更、ソフトウェアの活用などで解決策を模索している。

夜空が変わっちゃう? 従来より5倍も明るいSpaceXの人工衛星

「あのとっても明るい星雲はなに?」「あれは、SpaceXの衛星群だよ」

なんて会話が成立しないとも限らない今日この頃。進化、拡大する衛星通信ビジネスに天文学者は不安を抱えています。

イーロン・マスク氏率いるSpaceXが進めるプロジェクトDirect to Cell(DTC)。その名の通り、地球低軌道上を飛ぶ人工衛星が直接スマホ(セル)と繋がる通信システムです。通常は電波の入りにくい土地でも、空さえ見えればどこでも繋がれるのが魅力。

米通信企業のT-Mobileとタッグを組んだプロジェクトで、世界各国の企業が参加。日本からはKDDIが参加しています。

スマホの接続環境が広がり、向上するならいいね!と思いきや、その裏で頭をかかえる業界が…。天文学業界です。

地球低軌道上にバンバンと打ち上げられていく人工衛星。軌道大混雑で衝突や宇宙ゴミの増加が懸念されますが、人工衛星の光も天文学研究の障害となりつつあります。以前から、人工衛星の光が天文画像に写りこむ問題が指摘されてきました。

SpaceXのDTC用人工衛星は、他の従来の通信衛星よりも5倍も明るいという調査結果が公開。

DTC衛星がこんなにも明るい要因の1つは、その高度。通常、高度550キロあたりを飛ぶ一般的な人工衛星に対し、DTC衛星の飛行高度は350キロ。単純に地上から近いのです。

しかし、公開された調査レポートでは、もしDTC衛星が一般的な高度550キロあたりを飛行しても、他の衛星よりも2.6倍明るいと推測。

SpaceXがDTCのテスト第一弾として衛星群を打ち上げたのが今年1月。米連邦通信委員会から、6カ月間のテスト端末2000台、衛星840機の使用許可を受けています。が、今年3月にはこれを衛星7500機と大幅拡大申請。

天文学業界としては、今現在すでに悩みの種になっている衛星明るすぎ問題が悪化するのではと、苦言を呈さずにはいられません。が、対応する術はゼロではありません。

まず、高度が低いことでより明るく見えるDTCですが、逆に高度が低いことで観測エリアに映り込むスピードも速くなります。ヨーロッパ南天天文台の天文学者Olivier Hainaut氏は、米Gizmodoのメール取材にて、そのぶん天文画像に映り込んでもブレが大きくなるだろうと説明。結果、光の影響がでにくくなるだろうと語っています。

SpaceXは天文業界とも対話をしており、たとえば、反射の低い素材を活用する、衛星の構造(パネルの組み合わせ)を多少変え、反射しないパネルの裏が常に地球側を向くようにするなど、対応策が検討されているといいます。また、天文業界自身もソフトウェアの力で、衛星映り込みを取り除く術を模索しています。