真夏に作る“見た目涼やか”なゲーミングPC。実は冷却重視&パワフルな構成で酷暑に負けない!

AI要約

外気温が急上昇している夏にぴったりな冷却性能重視のゲーミングPCを作る。AMDのRyzen 7 7800X3DやGeForce RTX 4070 Ti SUPERを採用し、高性能と冷却力を両立。

大型のPCケースで組み込み作業はラクで、4K解像度でも快適にゲームが楽しめる。各パーツの温度や消費電力も安定しており、長期間使い続けられる総合力を持つ。

夏のゲームプレイに最適なPCを構築することで、快適なプレイ環境を確保。予算を抑えつつも高性能なゲーミングPCを作るポイントが紹介されている。

真夏に作る“見た目涼やか”なゲーミングPC。実は冷却重視&パワフルな構成で酷暑に負けない!

 日中なら39℃やら40℃など、信じられないような外気温が続く昨今。外にちょっと出るだけでもぐったりとしてしまう。そんな季節は、エアコンの効いた部屋でPCゲームを楽しむのが一番!

 ということで今回は、夏にぴったりな「ばっちり冷えるゲーミングPC」を作ってみよう。冷却性能重視のパーツを採用するのはもちろん、見た目にも涼しげなPCケースを組み合わせることで、夏らしい(!?)ハイパフォーマンスなゲーミングPCに仕上がった。

■ パワフルなゲーミングPCを目指しつつ酷暑を乗り切れるパーツを選定

 「夏らしい自作PC」とはなかなか難しいテーマだが、重視するポイントを二つ掲げた。まず一つ目は、各パーツをきちんと冷却できる「しっかりとした熱対策」だ。冒頭でも述べたとおり、気温が高くなる夏は冷却不足でシステムが不安定になりやすい。さらにPCゲームはシステムに高い負荷をかけるタスクなので、そうした状況でも安心して利用できる冷却性能が重要と考えた。

 もう一つは「スペックを追求し過ぎないこと」である。高性能なパーツを集めれば、当然ながら強力なゲーミングPC構成にはなる。ただ性能の高いパーツは発熱も大きく、生半可な冷却パーツではその性能を維持し続けられないし、何よりも高い……。円安とインフレのダブルパンチの中でPCに割けるコストにも限界がある以上、コストパフォーマンスはそれなりに考える必要はある。

 とはいえ、せっかくの“夏休みに作る”ゲーミングPC。おごるべきところはしっかりおごる方針でしっかり遊べるPCにはしたい。夏かつ涼、アッパーミドル狙いで検討してみた。

 こうしたことを踏まえ、重要パーツの一つであるCPUはAMDの「Ryzen 7 7800X3D」を選択した。本稿の準備をし始めた7月で、残念ながら新Ryzenはまだ選択肢に入れられなかったが、8コア16スレッドに対応するZen 4世代のCPUコアを採用した本製品は64MBの「3D V-Cache」を搭載しており、アッパーミドルレンジのゲーミングPCを作るなら、現時点でもまっ先に候補に挙がる。発熱は比較的抑えられており、スペシャルに巨大なラジエーターを備えた水冷型CPUクーラーでなくてもしっかり冷やせる。

 難点があるとすれば、価格が急上昇したり在庫薄になったりしている点。しかし、9000シリーズの入手もなかなか難度が高そうでかつ価格も……という状態。いずれにしても「欲しいとき、あるときに買う!」という状況か。

 もう一つのキーパーツとなるビデオカードは、GPUに「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」を搭載したZOTACの「GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity」だ。グレードとしてはアッパーミドルに位置するモデルとなる。

 GeForce GTX 4080以上のビデオカードは、性能はよいのは分かっているのだが、在庫の薄さとコストの高さ、相応の冷却環境や電源環境を整えなければならない、といった諸々を考えるとちょっと躊躇してしまう。安いパーツではないが、アッパーミドルのゲーミングPCを作るなら、このくらいを「目標」としたいところ。

 マザーボードはAMD B650をチップセットに採用するMSIの「B650 TOMAHAWK WIFI」。ミドルロークラスのマザーボードながら合計17フェーズの充実した電源回路や、大型のヒートシンクなどを備えており、高性能なCPUも安心して利用できる。

 PCI Express x16スロットやM.2スロットはPCI Express 4.0までの対応となるが、ゲーミング性能にはほとんど影響はないと言ってよいだろう。発売当初は4万円前後だったが、現在は2万5,000円を切るショップも多く、買い得感はかなり高い。

 CPUクーラーは、36cmラジエーターを組み合わせたLian Li Industrialの「Galahad II Trinity SL-INF LL-GA2-360-SLINF-BK」(以降GALAHAD II TRINITY)。クーラント液や水冷ヘッド内の通路を改良することで、前モデルからは冷却性能を大幅に向上。

 また水冷ヘッドや付属ファンには、映し鏡のような美しいイルミネーションを備える「インフィニティミラー」機能が組み込まれている。付属ファンは連結するだけでケーブル処理が行える「UNIFAN」対応なので組み込み作業はだいぶ楽になる。

 PCケースはFractal Designの「North XL」を選んだ。前面にウッド素材を採用し、デザイン性に定評のあるシリーズである。本体色はブラックとホワイトの2色を用意しているが、今回は見た目にも涼しげなホワイトを選んだ。

 側板が強化ガラスとメッシュパネルの2種類を用意するが、酷暑ど真ん中に馬力のあるPCを組むということで、今回は冷却性能を重視。通気性に優れるメッシュパネルをチョイスしてみた。3基の14cm角ファンを前面に装備しており、外気をたっぷりと取り込んで各パーツをしっかり冷却できる。

 電源ユニットはENERMAXの「REVOLUTION D.F. 12 ETV850G」。定格出力は最大で850W、80 Plus Gold認証を取得した省エネモデルだ。ケーブルがメッシュスリーブタイプなので隙間を通したり、マザーボード裏面などでまとめやすかったりするのも便利だった。またちょっとおもしろいのが、ATX3.1対応ながらも奥行きが12.2cmと短いこと。ATX3.1対応のコンパクトモデルはかなりめずらしく、小型ケースでも利用しやすいだろう。

 SSDはMicronの「Crucial T500 CT2000T500SSD8JP」で、容量は2TB。最近のPCゲームが要求するストレージ容量を考えると、ゲーミングPCなら2TBは欲しい。またPCI Express 5.0 x4モデルは現状だとかなり高価。ゲームでは価格差ほどのメリットが得にくいので、T500のようなPCI Express 4.0 x4対応の大容量モデルのほうがオススメだ。なお、メモリは同じくMicronの「Crucial CT2K16G56C46U5」で、容量は16GB×2とした。

 上の表は今回のパーツと実売価格をまとめたリストだ。合計金額はだいたい35万円という結果になったが、ビデオカードのグレードに見合う、あるいはそのポテンシャルを100%引き出すことを考えると、いたしかたない部分はある。ビデオカードのグレードをGeForce RTX 4070 SUPER搭載モデルにして、PCケースやCPUクーラーのグレードをやや引き下げることで、構成価格を20万円台半ばくらいまで引き下げることは可能だろう。

■ 大型のケースなので組み込みはラクゲームは4Kでも結構イケる!

 North XLはExtendedATX対応のかなり大きめなケースなので、組み込み作業は楽だ。各パーツは干渉することもなく、後日のメンテナンスも楽々。今回は簡易水冷型CPUクーラーのGALAHAD II TRINITYを天板に取り付けたが、マザーボード上辺にファンのフレームがかぶることはなく、各種ファンケーブルやEATX12V電源ケーブルもムリなく抜き挿しできる。

 GALAHAD II TRINITYは3基の12cm角ファンがラジエーターに取り付け済みであり、UNI FAN対応ファンの接続も済んだ状態なので、PCケースへの組み込みはスムーズだ。ただ、水冷ヘッド部分のケーブル接続と、UNI FAN対応ファンのケーブル接続をマザーボードや電源ユニットに対して別々に行う必要があるため、この点はちょっとややこしい。

 GALAHAD II TRINITYのファンと水冷ヘッドに組み込まれているインフィニティミラーは、非常に美しい。合わせ鏡のように何層ものLEDライトが表示され、立体感のあるイルミネーションになっている。こうしたLEDの美しさをじっくり楽しみたいなら、メッシュパネルではなく強化ガラスパネルモデルを選んでもよいだろう。

 まずはPCMark 10 Extendedと3DMarkの各種テストで、基本性能を見ていこう。おおむねハイミドルクラスのゲーミングPCとしては問題のないScoreであり、冷却性能が足りずに性能が低下している様子は見られない。

 次に実際のPCゲームを利用したベンチマークテストの結果を紹介する。下のグラフは、比較的描画負荷が軽めの「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク」の結果だ。グラフィックス設定は[最高品質]と[標準品質]に設定している。

 4K解像度(3,840×2,160ドット)時も含め、Scoreに対する評価はいずれも[とても快適]であり、テスト中の画面表示がカクつく場面はなかった。

 同じく描画負荷が軽い「レインボーシックス シージ」では、グラフィックス設定を[最高]と[中]に設定した。

 グラフの状況を見れば分かるとおり、4K解像度でもハイリフレッシュレート液晶ディスプレイが欲しくなるほどのフレームレートを叩き出しており、プレイにはまったく支障はない。

 比較的描画負荷が重い「サイバーパンク2077」では、グラフィックス設定を[レイトレーシング:ウルトラ]に設定し、フレーム生成機能の無効/有効を切り換えてテストを行った。

 フレーム生成なしでの4K解像度はさすがに厳しいかなと予想していたのだが、意外といけそうだ。もちろんフレーム生成を有効にすれば、さらに快適になる。RTX 4070 Ti SUPERを採用したメリットをフル活用するなら、実際のプレイ時にはフレーム生成を使うべきだろう。

 もう一つ描画負荷の高いゲームとして、「フロンティア・オブ・パンドラ」も試してみた。グラフィックス設定は一番高い[ウルトラ]、そしてこのタイトルでもフレーム生成機能が利用できるので、サイバーパンク2077と同様に無効/有効を切り換えてテストを行った。

 このタイトルでは、フレーム生成機能なしだと4K時に最低FPSが60を切る場面もある。とはいえ画面を見ていてもごくわずかだし、プレイ感覚はかなり快適だった。もちろんこのゲームでもフレーム生成機能の効果は大きい。

■ Ryzen 7000シリーズながらCPU温度は控えめ、GPU温度も安心

 夏を乗り切る冷却重視のゲーミングPCがテーマなので、やはり各部の温度も気になるところだろう。下のグラフはいくつかの状況における各部の温度だ。「アイドル時」は起動後10分間の平均的な温度、「動画再生時」は動画配信サイトの動画を1時間再生中の平均的な温度を計測した。

 「PCゲーム時」は3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行中の最高温度で、PCゲームのプレイ中を想定している。「Cinebench時」は、Cinebench R23を実行中の平均的な温度で、CPU負荷の高いアプリでの温度がどうなるかを見るためのものだ。

※温度計測にはOCCT 13.1.3を使用、CPU温度は「CPU CCD1(Tdie)」、GPU温度は「GPU Temperature」

 結果を見るとCinebench時のCPU温度は71℃、3DMark時のGPU温度は70℃と、安心できる温度だった。Ryzen 7000シリーズは基本的にCPU温度が上がりやすく扱いにくい印象が強かったが、3D V-Cache搭載モデルはそうした特性に四苦八苦することはなく、ずいぶん使いやすいことが分かる。

 ただしCPUクーラーのファン制御用にシステムに通知される温度[OCCTではCPU(Tctl/Tdie)、そのほかではPackage温度など]はちょっと高めになっており、アイドル時でも50℃前後になる。そのため標準状態では、3基ずつ装備するケースファンとCPUファンの回転数が、いずれも1,000rpm前後まで上がる。

 この状態だと動作音がかなり気になるので、ケースファンはマザーボードのファンコントロール機能、CPUクーラーのファンはLian Li Industrialの総合制御ユーティリティ「L-Connect 3」を使って、どちらも500rpm前後に絞ってみよう。アイドル時のCPU温度はまったく変わらず、動作音はかなり静かになった。

 続いてシステム全体の消費電力。

 消費電力がもっとも高かったのは3DMark時で、もっとも高いタイミングで406W。今回組み合わせた電源ユニットの定格最大出力が850Wなので、ちょうどよい数値と言えるだろう。一方で主にCPUに対して連続的な負荷がかかるCinebench時は165Wと、かなり低かった。Ryzen 7 7800X3Dの扱いやすさは、こうした消費電力の状況からも見て取れる。

■ 優秀な冷却性能、アッパーミドルの性能とAM5プラットフォーム今夏の自作は長期間使い続けられる“総合力”を備えた1台に

 夏らしい自作PCということで、さまざまな観点から見てきたが、いかがだっただろうか。つや消しホワイトのボディは見た目にも美しく、またメッシュパネル越しにLEDの光が淡くはかなく広がる様は、なかなか風情があるようにも感じた。

 またWQHD解像度はもちろん、4K解像度でのプレイも十分対応できるだけのゲーミング性能も確保。予算を抑えられる部分は抑えつつでも盛るべきところはしっかり盛る。結果、ゲーミングを含めた総合力を十分に備えた長く付き合っていけそうなPCに仕上がった。