シャープ、営業赤字脱却できず--新工場と地元企業提携でNo.1ブランドを狙う国とは

AI要約

シャープの沖津社長兼CEOが2025年3月期第1四半期決算を発表し、業績改善に向けた取り組みを強調。

デバイス事業のアセットライト化、国内外での提携や取り組み状況について伝える。

ブランド事業の強化や新規事業展開、イベントの開催など、継続的な成長戦略を示す。

シャープ、営業赤字脱却できず--新工場と地元企業提携でNo.1ブランドを狙う国とは

 シャープ 社長兼CEOの沖津雅浩氏は8月9日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを発信した。同日に、2025年3月期第1四半期決算(2024年4~6月)を発表。売上高は減収となったほか、営業赤字から脱却できず、経常利益および最終利益が減益という厳しい内容ではあったが、第1四半期業績は想定通りの進捗として、2024年度通期見通しは据え置いている。今回のCEOメッセージでは、「第1四半期決算は想定通り着地、引き続き業績改善に努めよう」と題して、第1四半期業績や中期経営方針の取り組み状況などについて触れた。

厳しい市況の中での社長就任

 沖津社長が、CEOメッセージを発信するのは、社長兼CEOに就任した直後の7月1日以来、2回目となる。8月1日には、CEOメッセージとは別に、沖津社長の経歴などを紹介する記事をイントラネットに掲載しているという。

 今回のCEOメッセージの冒頭で、沖津社長兼CEOは、社長就任からの1カ月間、取引先や金融機関などを訪問したこと、台湾を訪問し、鴻海精密工業 董事長の劉揚偉氏をはじめとした鴻海幹部とミーティングを行い、今後の協力関係などについて議論したことなどを報告。「各所では大変温かい激励の言葉を多数もらった。こうした期待に必ず応えなければならないという思いを改めて強くした」との姿勢を示した。

 CEOメッセージでは、まずは、2025年3月期第1四半期(2024年4~6月)決算について触れ、ブランド事業が売上高、利益ともに前年同期比2桁伸長となり、好調に推移。デバイス事業は売上高が減少し、利益は赤字ではあるものの横ばいを確保。全社では、売上高は前年比微減となったが、営業利益は赤字幅が縮小。最終利益については、営業外の為替差損益が大きく変動したことなどから、前年同期を下回り、赤字となったと報告した。

 「為替が約38年ぶりとなる円安水準を記録し、海外からの輸入が多いブランド事業にとっては非常に厳しい事業環境となったが、スマートオフィスは前年同期に対して2.5倍の営業利益を計上。スマートライフ&エナジーやユニバーサルネットワークでは、安定的に利益を確保できた」とし、「足元では、国内外で需要の減速が懸念され、今後、事業の舵取りが一段と難しくなる局面に入る。こうした時こそ、お客様と直接接点を持つ営業部門から、事業の指揮を執る責任者、私をはじめとした本社経営幹部に至るまで、社内の情報連携を一層密にし、変化を機敏に察知して、迅速かつきめ細かく対応していくことが重要である。第1四半期の業績はほぼ想定通りの着地となったが、今後も公表値達成に向け、全社一丸となって業績改善に努めよう」と呼びかけた。

SDPは8月末でパネル生産を停止

 また、中期経営計画で掲げているデバイス事業のアセットライト化への進捗状況についても説明した。

 堺ディスプレイプロダクト(SDP)については、7月28日に大型液晶パネルの最終投入を終え、8月末までにパネル生産を停止する予定であること、堺工場をAIデータセンターなどに転用すべく、KDDIおよびソフトバンクと協議を進めていることを報告。

 さらに、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)では、5月14日に発表した「亀山第二工場/三重第三工場の生産能力調整」および「堺工場OLEDラインの閉鎖」を、2024年6月末までにすべて完了。7月9日には、三重第一工場を半導体後工程の生産ラインに転用することに関して、半導体関連企業のアオイ電子と基本合意したことについても報告した。

 また、シャープセンシングテクノロジー(SSTC)およびシャープ福山レーザー(SFL)については、2024年度中に、鴻海に譲渡完了することを目指しているとし、「鴻海の劉董事長と定期的にミーティングを行うなど、具体的協議を進めている。詳細については決まり次第、改めて伝える」とした。

地元企業と提携、エジプトでもNo.1ブランドへ

 中期経営計画のもうひとつの柱である「ブランド事業の強化」の進捗についても触れた。

 シャープは、7月25日に、エジプトのエルアラビと、冷蔵庫の新工場をエジプトに共同で建設することで合意している。エルアラビは、エジプトにおけるシャープのパートナー企業で、2004年から、家電製品の製造販売を委託している企業だ。

 「エルアラビの協力もあり、シャープブランドの冷蔵庫とエアコンは、エジプトにおいてシェアNo.1を獲得している。今回の新工場建設により、成長著しいエジプト市場において、シャープブランドをより盤石なものにするとともに、アフリカや中近東への輸出拠点としても活用し、さらなる事業拡大を実現していく」と述べ、「今回の契約締結にあたっては、私自身がエジプトを訪問した。調印式には、エジプトのモスタファ・マドブーリー首相や大臣が臨席し、エジプト政府から、今後の事業展開に対して引き続きサポートをもらえるとの力強いメッセージがあった」と語った。

9月には「Tech-Day’24 Innovation Showcase」を開催

 また、B2B分野においては6月に、台湾の産業コンピュータ分野大手であるENNOCONNと、スマートリテールを中心とした協業に関する覚書を締結。両社の商品によるクロスセルや共同開発、コンビニ分野における協業などで、具体的な検討を開始しているという。

 さらに、AIやEV、次世代通信、グリーンエナジー、インダストリーなどの分野を中心に、「Next Innovation」の探索も加速。9月17~18日の2日間、東京国際フォーラムで開催する「Tech-Day’24 Innovation Showcase」において、取り組みの一端を紹介する予定であることにも触れた。「Tech-Day’24 Innovation Showcaseに向けて、万全の準備で当日を迎えてほしい。反響の獲得や協業先の探索に、貪欲な姿勢で取り組むことを期待している」と語った。

 CEOメッセージの最後に沖津社長兼CEOは、第1四半期の業績はほぼ想定通り着地し、中期経営方針の具体化に向けた取り組みが着実に進展していることを改めて強調。「夏季休暇明けから、再び、年間黒字の達成、さらには将来の飛躍を目指して、ともにがんばろう!」と呼びかけた。