カキ養殖の切り札となるか カキの赤ちゃん“幼生”を見つけるアプリ 顕微鏡が不要に 中国電力が広島で実証試験
広島では、中国電力が開発したカキ幼生検出アプリの実証試験が行われており、海中で産卵したカキの赤ちゃん“幼生”を見つける取り組みが注目されている。
アプリでは、海水を採取し、AIが画像解析して幼生を見つけるシステムが導入されており、場所や日時も記録される。これまでの手法よりも効率的である。
アプリを使うことで、養殖業者は幼生の状況を把握しやすくなり、効率的に対処することができる。実用化に向けてはさらなる課題が残るが、期待が寄せられている。
夏はカキの産卵の季節。カキの産地、広島では、カキの赤ちゃん“幼生”をアプリで見つける試みが行われている。中国電力が開発した“全国初”のカキ幼生検出アプリの実証試験のその後を追った。
白いネットで海水をとり、これをアプリで解析する。これは、中国電力が進めるカキの赤ちゃんを検出するアプリの実証試験だ。
7月から9月に海中で産卵、受精したカキの赤ちゃん“幼生”が、いかだにつるされた貝殻に着くと、これが成長し、およそ3年で養殖カキになる。
その幼生が、どのくらいいるかをアプリで見ることができるようになった。海水の写真をクラウド上でAIが画像解析して、幼生を探し出すシステム。場所や日時もアプリに記録される。今までは、海水を陸に持ち帰り、顕微鏡で見分けていたという。
二枚貝養殖研究所・鬼木 浩 社長:
カキの赤ちゃんは250ミクロンといって0.25ミリくらい。付着直前になると眼点という色素の黒い点が出る。これは顕微鏡で見てもなかなか見にくいが、アプリだと、これが見事に全部わかる。その技術は想像していなかったのでびっくりした。
アプリを使った実証試験は2023年に広島県内4つの漁協でスタートし、2年目の2024年はトライアルとして、宮城県や岡山県の漁協などでも行っている。
アプリを開発した中国電力の西田有理花 研究員は、広島のデータは多く集まり、アプリの精度が上がっているが、ほかの地域のデータも集めてAIに学習させ、広い地域で使えるようにしたいと語る。
2024年から実証試験に新たに加わった東広島市安芸津町の森尾水産の森尾龍也代表は「潮の出入りが激しいので幼生が留まらない」と嘆く。
カキの幼生の採取に適した期間は、水温や潮の流れなどに左右されるため、長い時で1か月、短い時は2~3日と言われ、予測が難しい。アプリを使えば、その年にどの地域に幼生が多いかという情報をシェアすることもできる。この日の結果を見せてもらった。赤い正方形がカキの幼生。
森尾水産・森尾 龍也 代表:
これがきょうの結果です。きのうよりだいぶ減っていますね。きのうの5分の1くらい。今年は最初から苦戦気味です。ただ山が小さいなりにでも、アプリを活用して投入する量を減らして調整がスムーズにいくので、そこまで四苦八苦はしていない。
アプリで幼生が少ないとわかれば、場所を移すなどの対処が可能になる。これまでは、海水を陸に持ち帰り、顕微鏡で見ていたのが、アプリのおかげで、船上でのわずかな時間で結果が分かるようになり、養殖業者の間では、その年の最初の段階の状況把握に役立てることに期待がかかる。
ただ、実用化に向けては、得られた個別のデータをどの範囲まで公開するのかなど、まだ乗り越えなければならない課題が多いということだ。
(テレビ新広島)