「過去の水難事故、よく調べることが大切」専門家が指摘 「いつもは安全な場所」でも注意、データで可視化

AI要約

海や川のレジャーシーズンがやってきたが、水難事故が相次いでいる。専門家は過去の事故を調査することが重要だと指摘。

朝日新聞が開発した「水難事故マップ」は、事故の発生場所を簡単に確認でき、全国の水難事故のデータをまとめた。

事故が起きているエリアを知ることや、安全対策を講じることが重要。

「過去の水難事故、よく調べることが大切」専門家が指摘 「いつもは安全な場所」でも注意、データで可視化

海や川のレジャーが楽しい季節になってきましたが、おぼれたり流されたりする事故のニュースも目にするようになってきました。事故防止として、専門家は「その場所で過去に起きた事故をよく調べることが大切」と指摘しますが、そのスポットで事故が多いのかどうか、簡単に確認する方法はなかなかありませんでした。

そこで、朝日新聞が海上保安庁と公益財団法人「河川財団」のデータをもとに開発したのが「水難事故マップ」。どこでどんな事故が起きたか、地図で簡単に調べられるようになっています。

遊び盛りの4歳の子どもがいる記者(41)も人ごとではない「水の事故」。警察庁によると、2023年に海や川などで起きた水の事故は1392件。死亡・行方不明になったのは743人でした。

長い期間で見ると死亡・行方不明者数は減少傾向にありますが、近年は700人前後の横ばい状態で、なかなか減っていかない状況が続いています。

横浜市の川で小学5年生の男児が溺れて死亡したり、三重県桑名市の海で貝採りをしていた20代の男性が死亡したりするなど、今年も全国で水の事故が相次いで起っています。

水の事故の怖さは、風向きや潮の満ち引きなどの条件が重なることによって「いつもは安全な場所でも起こりうる」ところ。

そのため、水難学会理事で長岡技術科学大の斎藤秀俊教授は「事故に遭わないためには、ライフジャケットを着るといった現地での対策だけでなく、その場所で過去に起きた事故をよく調べることも大切」と話します。

では、水の事故がどこで起きているかを、どのように調べればいいのでしょうか。

実は、これまで海や川で起きたレジャー中の事故の場所をまとめて調べられるマップはありませんでした。

そこで、朝日新聞デジタルでは、海上保安庁と公益財団法人「河川財団」の協力のもと、2013~22年に起きた全国の水の事故約1万件の発生場所が調べられる「水難事故マップ」を7月6日から公開し始めました。

マップは無料で誰でも見られ、発生場所だけなく、事故に遭った人の年代や、どんなレジャー中の事故だったかを確認することができます。

また、マップでは、朝日新聞の独自の分析で分かった全国47カ所の「重大事故集中エリア」も確認することができます。

事故が集中していたエリアを取材で訪れると、「水深がひざ下ほどしかない川辺」や「プールのように穏やかな海」といった一見安全そうな場所でも、事故が起きていたことが分かりました。

また、「せっかく旅行にきたんだから」、「つかるだけ」と、体調や気象状況が悪い中で海や川で遊び、溺れてしまうケースが後を絶たないことも分かりました。

飲酒後や体調が悪い時には水に入らないといった心構えは言わずもがな。

そういった心構えに加えて、どこでどんな事故が起きているのかを水難事故マップで確認し、水の事故に遭う人が少しでも減ることにつながることを願っています。