生成AI特許出願で中国首位 米国の6倍:国連報告書

AI要約

WIPOのリポートによると、中国の生成AI分野の特許出願件数が米国の6倍に上り、中国がトップの位置を獲得している。さらに、企業の上位には中国企業や米IBMなどがランクインしている。

特許出願件数では中国が1位であり、中国企業・組織も上位を占める中、インドの出願件数が急速に増加している。生成AIは様々な経済分野に影響を与える可能性を秘めているとして注目を集めている。

WIPOは今後も生成AIの特許出願の波が来ると予測し、AIを活用した創薬・化学分野に期待が寄せられている。今後もデータを分析し、政策立案者が生成AIの開発を促進できるようサポートしていくとしている。

 国連の世界知的所有権機関(WIPO)がこのほど公表したリポートで、中国の生成AI(人工知能)分野の特許出願件数が米国の約6倍に上ることが分かった。国別出願件数で中国はトップ。米国がこれに次いだ。企業の上位には中国・騰訊控股(テンセント)や中国・百度(バイドゥ)、米IBMなどが並んだ。

■ 中国3万8200件、米国6300件

 WIPOによると、中国は2014年から23年までに3万8210件の生成AI関連特許を出願した。これに対し、米国は6276件だった。WIPO特許分析マネジャーのクリストファー・ハリソン氏は「中国の特許出願は、自動運転から出版、文書管理まで、幅広い分野を網羅している」と記者団に語った(英ロイター通信)。

 3位は韓国、4位は日本、5位はインドで、それぞれ4155件、3409件、1350件だった。このうち、インドの出願件数が最も急速に伸びている。  ハリソン氏は、「小売業などで顧客サービスの向上を目的にチャットボットが広く利用されている。一方、生成AIは科学、出版、交通、セキュリティーなど、多くの経済分野を変革する可能性を秘めている」とコメントした。

■ 1~4位が中国企業・組織

 出願件数が上位の企業・組織は、(1)テンセント、(2)中国平安保険(Ping An Insurance Group)、(3)バイドゥ、(4)中国科学院(Chinese Academy of Science)、(5)IBM、の順。中国は4組織が5位以内に入った。

 6位以降は、(6)中国アリババ集団、(7)韓国サムスン電子、(8)米アルファベット(グーグルの持ち株会社)、(9)動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」運営の中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)、(10)米マイクロソフト、の順だった。

 米CNBCによると、中国は、大規模言語モデル(LLM)の開発において、米オープンAIやマイクロソフト、グーグルに後れを取っているが、最近は巻き返しを図っている。テクノロジー大手のアリババやバイドゥなどは、23年に独自LLMを開発した。

 24年5月、中国政府はAI分野の3カ年行動計画を発表した。7月には、26年までにAIで50以上の「国家標準」を制定すると明らかにした。AI半導体や生成AIなどの標準化を強化し、国家計算能力の増強を図る考えだ。

■ 創薬・化学分野での活用に期待

 WIPOのリポートによると、生成AI特許の出願件数は、AI特許出願件数の6%を占める。そのアプリケーションの種別を見ると、画像と動画データが1万7996件と最も多く、次いでテキストが1万3494件、音声・音楽が1万3480件だった。

 WIPOは、「近いうち、さらなる特許出願の波が来る」と予測する。WIPOのハリソン氏は「生成AIは、今後様々な産業に多大な影響を与える」とし、AIを活用した分子設計など、創薬・化学分野における役割の重要性を強調した。今後はWIPOも生成AIを活用しながら、傾向を詳細に分析した新たなデータを公表する予定だ。「特許出願の傾向とデータを分析することで、政策立案者が、我々の共通の利益のために生成AIの開発を具現化できるよう支援する」(WIPO)と、このリポートの意義を説明した。