今後どうなる? 作った電気がムダになる再エネの「出力制御」 解決策は?

AI要約

2023年は再エネの出力制御が過去最高を記録し、太陽光発電の電力が無駄に捨てられる状況が続いている。

日本でも出力制御が必要な地域が増えつつあり、大規模な系統用蓄電池の導入が進められている。

世界的には蓄電池の導入が急速に進んでおり、中国は特に著しい伸びを見せている。

今後どうなる? 作った電気がムダになる再エネの「出力制御」 解決策は?

 今年もまた、再エネでもめる時期が近づいて来た。2023年は、太陽光発電した電力が使い切れず、ソーラー発電事業者に無駄に電気を捨てさせるという「出力制御」が過去最高を記録したのも記憶に新しいところだ。

 電力需要の増減に対して発電量を調整はするのだが、それでも下げきれないために太陽光発電を止めることになる。どれを止めるかは順序が決まっており、まず火力をさげ、それでもだめなら他地域へ送電、次いでバイオマスとなり、4番目に太陽光・風力が来る。そうとういろいろやってもダメだったわけだ。

 ソーラー発電は事業者もどんどん増えており、それを受け入れるのは系統電力会社になる。これまで出力制御が必要だったのは九州電力だけだったが、22年度から徐々に他の電力会社でも実施されるようになった。特に大きかったのが23年4月と5月で、その半分以上が九州電力となっている。

 九州電力では原発もそれほど止めていないのでベースロード電源比率が高いのに加え、天候にも恵まれるのでソーラー発電量が多くなる。ある程度は仕方がないとはいえ、東日本大震災で全国的に電力不安を経験したわれわれからすれば、無駄に電気を捨てるというのは、何のための再エネなのかという思いもある。

 世界的に見れば、再エネ比率が増えれば出力制御は増えるので、日本はまだ大したことないとする説もあるが、アイルランドは結構ひどいことになっている一方で、スペインやドイツのように、一定量で押さえられているところもある。

 もっともヨーロッパ大陸にある国々は電力網でもつながっているので、各国で連携して融通が効かせられるという面もある。一方アイルランドの電力網はイギリスとはつながってはいるものの、しょせんは両方とも島国なので、ヨーロッパ大陸とはつながっていない。日本も将来的には似たような状況になりかねない。

 そうした傾向をにらんで、日本では22年に電気事業法を改正し、電力系統に直接接続する「系統用蓄電池」を運営する大規模事業者も一種の発電事業と位置付け、発電同様の扱いにして発展を促すことになった。

 要は昼間にあまった再エネは系統用蓄電池で吸って、夜に吐き出すというバッファーを多く作れば、無駄にはならないというわけである。

 海外では、米国カリフォルニアの電力会社CAISOで、24年4月16日に史上初めて蓄電池からの放電が管内で最大の供給源になった。最大になったのは午後8時で、昼間にためた電力を吐き出した結果である。

 またミネソタ州では23年に鉄空気電池を用いたエネルギー貯蔵システムの構築を承認し、電力供給の安定化を図ろうとしている。

 こうした巨大蓄電池導入は世界中で急速に拡がっており、特に2023年の中国の伸びはエグいことになっている。30年には23年の6倍に増加すると試算されている。

 日本も法整備して力をいれてはいるが、23年は間に合わなかった。おそらく24年もまだ間に合わないだろう。