赤潮発生をディープラーニングで「ほぼ100%精度予測」…高専生開発の漁業支援アプリ「4億円」評価

AI要約

香川高専の学生たちが漁業現場を支援するアプリを開発し、全国の高専生が技術力を競うコンテストで2位に輝いた。

アプリには人工知能を活用して赤潮の発生予測や効率的な航路提示などの機能が備わっており、実用化も視野に入れている。

チームは現場のニーズを反映させるため、漁業者からの意見を取り入れて機能を追加し、コンテストで高い評価を受けた。

 人手不足や高齢化が進む漁業の現場を支援しようと、香川高専の学生たちが開発したアプリが、全国の高専生が技術力を競うコンテストで2位に輝いた。人工知能(AI)を活用して、赤潮の発生を予測したり、効率的な航路を示したりする機能を備える。将来的に企業との連携による実用化も見据えている。(尾崎達哉)

 手がけたのは、同高専の創造工学専攻2年の金地琳太郎さん(22)ら7人のチーム。アプリ「Seaサポ」は漁業者や海運業者ら向けで、▽1週間後までの赤潮の発生予測▽潮流を予測し、燃料のロスが少ない航路の提示▽いけすへの人や船の侵入検知▽いけす内の水温や酸素濃度の観測――など七つの機能がある。

 チームはコンテストを目指して、昨年8月から村上幸一准教授の指導のもと、開発に着手した。

 金地さんは、赤潮の発生予測を担当した。過去23年分の燧灘(ひうちなだ)の水温、酸素濃度などのデータをもとに、赤潮が起こりやすい傾向を分析し、AIに「ディープラーニング」(深層学習)させることで「ほぼ100%の精度で予測できるようになった」という。成功まで5か月間の試行錯誤が続き、「苦しかったが、なんとか完成してホッとした」と話す。

 メンバーは現場のニーズを探ろうと、漁業者らへの聞き取りも実施。その意見を反映させ、アプリの機能を追加していった。

 電気情報工学科4年、斉藤壮志さん(19)は現場の声を受けて、離れた場所でも、いけす内の水温や酸素濃度を確認できるシステムを開発した。実験に協力する直島沖のいけすにセンサーやコンピューターを設置し、クラウド技術も活用して、観測する仕組みを作り上げた。

 しかし、今年2月には雨で機器が水没し、観測が途絶えたこともあったといい、「設計が甘く、自然環境をなめていた。必死に朝から夜まで取り組み、動いたときは安心した」と振り返る。

 今年5月に開催された「第5回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2024」で2位に輝いた。技術力や機能、ビジネスとして成立するかが審査のポイントだった。アプリは「地域課題の解消にチャレンジしている」として、審査員の投資家3人から最高4億円の評価額があるとされた。