【イベントレポート】「映適」認定制度スタートから1年で84作品が申請、財政やスタッフセンターの課題を報告

AI要約

日本映画制作適正化機構(映適)の初年度記者報告会が行われ、映画製作者や撮影監督団体の代表が出席。

映適は2023年から映像制作の適正化を図り、認定作品には「映適」マークが付与される制度を構築。

現在84本の作品が申請され、31本が認定。財政状況や課題について議論が続いている。

【イベントレポート】「映適」認定制度スタートから1年で84作品が申請、財政やスタッフセンターの課題を報告

日本映画制作適正化機構(映適)の初年度記者報告会が本日7月26日に東京・東宝本社で行われ、理事を務める日本映画製作者連盟(映連)代表理事の島谷能成、日本映画製作者協会(日映協)代表理事の新藤次郎、日本映画撮影監督協会(JSC)代表理事の浜田毅が出席した。

映画製作者(製作委員会)・制作会社・現場スタッフの多くを占めるフリーランスが対等な関係を構築して公正な取引が行えるよう、映連・日映協・JSC、そのほかの各職能団体(映職連)が経済産業省と連携し、2022年に設立された映適。2023年4月から「映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドライン」に則って適正な制作が行われた映画に「映適」マークを付与する制度が開始された。このほかスタッフの処遇の向上や人材育成、ハラスメントの相談窓口、キャリアの管理などを担うスタッフセンターが設置されている。島谷は、この会見の目的として「初年度を終え、現状や課題を報告したい」「我々を取り巻く行政・法的な環境が変化しています。その中で映適がどこに向かうのかを皆さんと再確認したい」と話した。

スタッフセンターには、本日時点で個人が177人、プロダクションとしては46社が登録したと発表された。契約書や撮影現場でのルールなどを定めた映適の認定制度に申請された作品は84本で、現時点で31本の作品が認定されている。なお、申請数に対して認定数が少ないのは、審査が撮影前・クランクアップ後・ポストプロダクション後の3段階で行われており、申請から認定までには年単位の時間を要するため。現時点で“認定不可”となった作品はなく、製作途中で労働時間などがガイドラインに沿えていない現場に対しては、単に却下するのではなく改善勧告を出しながら進めているという。また、映連の4社(松竹・東宝・東映・KADOKAWA)で同ガイドラインをもとに撮影された映画では、通常よりも10~15%ほど製作費が増えるという報告もあった。

映適の財政状況については、島谷は「収入は、映適認定の申請料、登録したスタッフのギャランティの1%分、賛助会員の皆さんからの協力金の3つが柱となっています。初年度は健康的な状態で終えられたが、それは無償の援助のようなものがあったうえでのこと。我々としては3年ぐらいで映倫(映画倫理機構)のように独立した組織にしていきたいと言っていたが、今のところはまだまだ届いていない」と明かす。続けて、首相の岸田文雄が掲げる「新しい資本主義実現会議」に触れ、「官邸からの指示によって、公正取引委員会が現場の実態調査に乗り出しています。今年度は音楽や放送に関する現場、2025年度には映画の撮影現場にも実態調査が入るということです。こうした状況の中で、数年の検討を経て映適がスタートできていたことは非常によかったと思う」と述べつつ、「設立にあたって力は借りたが、経済産業省の方が中に入って何かをしているわけではない。あくまで映画業界の自主的な組織であることを誤解しないでいただきたい」と伝えた。

今後の課題として、浜田はスタッフセンターに関し「契約書がないというブラックな状況を改善したくて始まったので、契約書を交わせる環境を作ればスタッフが登録してくれると思っていたが、より大きなメリットがないとなかなか入ってこないということがよくわかった」と言及。続けて「登録者が増えれば増えるほどスタッフセンターの存在感が増してくるはず。映画プロデューサーがスタッフを探す拠点になってほしいと思っている」と語る。スタッフセンターに登録することでWeb上で契約書が作成できるほか、インボイスの適用、労災保険への加入が可能なことも伝えつつ、浜田は「スタッフの登録が増えるほど申請作品も増えてくると思う。『契約書がなくて大変だ』という人にぜひ参加してもらいたい」と訴えた。

7月25日時点で「映適」に認定された作品と申請者の一覧は下記の通り。

■ 「映適」認定作品一覧

「映画 仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐」(東映 / 東映テレビ・プロダクション)

「映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」(東映 / 東映テレビ・プロダクション)

「仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング」(東映ビデオ / 東映テレビ・プロダクション)

「仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦」(東映 / 東映テレビ・プロダクション)

「ルート29」(ハーベストフィルム)

「六人の嘘つきな大学生」(東宝 / KADOKAWA)

「邪魚隊/ジャッコタイ」(東映ビデオ / 東映)

「恋わずらいのエリー」(松竹 / 松竹撮影所)

「劇場版 鬼平犯科帳 血闘」(日本映画放送 / 松竹)

「九十歳。何がめでたい」(TBSテレビ / スタジオブルー)

「特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター」(東映ビデオ / 東映)

「雪の花 ―ともに在りて―」(木下グループ / 松竹撮影所)

「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」」(東映ビデオ / レオーネ)

「Vシネクスト『キングオージャーVSドンブラザーズ』」(東映ビデオ / 東映テレビ・プロダクション)

「Vシネクスト『キングオージャーVSキョウリュウジャー』」(東映ビデオ / 東映テレビ・プロダクション)

「Cloud クラウド」(日活 / ジャンゴフィルム)

「GEMNIBUS vol.1」(東宝 / AOI Pro. / 白組 / virgin earth, inc.)

「おいハンサム!!」(日本映画放送 / ヒント)

「スオミの話をしよう」(フジテレビジョン / エピスコープ)

「もしも徳川家康が総理大臣になったら」(東宝 / TOHOスタジオ)

「逃走中 THE MOVIE」(フジテレビジョン / フジクリエイティブコーポレーション)

「本心」(リキプロジェクト)

「カーリングの神様」(文化工房)

「あのコはだぁれ?」(松竹 / ブースタープロジェクト)

「恋を知らない僕たちは」(松竹 / 松竹撮影所)

「仮面ライダー THE SUMMER MOVIE 2024/仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク」(東映 / 東映テレビ・プロダクション)

「爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット」(東映 / 東映テレビ・プロダクション)

※2024年7月25日(木)時点

※認定情報公開前の4本を除く