長野の銃撃事件4年、子ども2人の命奪われ喪失感癒えない父…やまぬSNSデマ「いつまで続くのか」

AI要約

市川さんが家族を失った銃撃事件から4年が経ち、喪失感が癒えない悲しさを感じている。

家族の思い出の場所を巡りながら癒しを求めていたが、今年に入りそれができなくなりつらさが増している。

犯罪被害者給付金制度が改正され、支援策が強化されているが、過去の被害者には遡及されない現状に不安を感じている。

 暴力団組員が民家に押し入り、2人が殺害された長野県坂城町の銃撃事件から26日で4年。見ず知らずの男に長女と次男の命を奪われた市川武範さん(59)は、あの日から時間がたてばたつほど、会いたい気持ちやさみしさで胸が苦しくなり、喪失感は癒えることはない。(塔野岡剛)

 穏やかな暮らしが突然断ち切られた市川さんが、妻と心の支えにしていたのが杏菜さんと直人さんの思い出の場所を巡ることだった。家族の思い出のレストランや地域の祭りに折に触れて足を運び、2人の生きていた記憶を確かめてきたが、今年に入り、それができなくなった。年を追うごとに、会いたい気持ちが強くなっていく。「事件の後にしばらく必要だったことが、今はつらい」

 凄惨(せいさん)な事件現場となった自宅にはとても住めず、エアコンがなく家賃が安いアパートに転居した。自宅のローンの返済なども残したままだったが、精神的な傷を負った妻を付きっきりで介助するため、市川さんは仕事を休職せざるを得なかった。犯罪被害者給付金制度に基づき、国から支給された給付金は計約680万円。預貯金と合わせても十分な金額ではなかった。

 生活を切り詰めたものの、給付金も尽きた。国は犯罪被害者の支援強化に乗り出し、今年4月に被害届の提出や裁判など必要な手続きを同一の弁護士が一貫して行う制度を盛り込んだ改正総合法律支援法案が、衆議院で可決された。遺族への給付金の最低額は現行の320万円から1060万円に引き上げることなどを柱とした案が警察庁の有識者検討会でまとまり、6月中の実現を目指している。

 支援拡充の動きが報道されると、周囲からは「よかったね」「市川さんも楽になるね」と声をかけられるものの、こうした支援策は現時点で過去の事件の被害者に遡及(そきゅう)されることはない。

 片付けのために訪れる自宅で2人の遺品を見つめ、思いをはせると、いつの間にか時間がたっているという。「これからどうなるのか」。不安は尽きない。