介護施設送迎車死傷事故、運転の75歳は三つのアルバイトを掛け持ち…年齢7歳偽り採用される

AI要約

男性介護施設の送迎車に不注意で利用者ら3人を死傷させ、実刑判決を受けたケースについて報告されている。

運転手は借金返済のプレッシャーから高齢者支援のアルバイトを選び、アクシデントが起こった。介護業界の人手不足も要因となった。

介護施設の求人倍率が高く、新型コロナ禍で特に深刻になっており、施設は本部から人を派遣している状況だった。

 さいたま市内の介護施設で昨秋、利用者ら3人が送迎車にはねられ死傷した。運転していた男(75)は借金返済に追われ、三つ目のアルバイト先として介護施設のドライバーを選んだ。慢性的な人手不足から高齢者が高齢者を支えている介護業界の現状も事故の遠因となった。(西部悠大)

 事故を起こした男は、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)などで4月に懲役3年6月の実刑判決を受け、控訴した。

 1審判決によると、男は昨年9月、介護施設駐車場で送迎車のアクセルを誤って踏み、高齢の利用者2人をはねて死亡させ、職員にけがを負わせた。

 公判や関係者によると、男は63歳の時に機械加工会社を定年退職した。貯蓄が少なく、頼れる親族もなかったことから、バス会社と建設会社でのアルバイトを始めた。だが、70歳代前半、200万円以上の借金を背負った。年金を含め当時の月収は約20万円。生活は困窮した。

 三つ目のアルバイト先として見つけたのは介護施設の運転手だった。「どうしても採用されたい」との動機から、面接では年齢を7歳若く偽った。採用後には、生年月日欄を偽造した免許証のコピーを施設側に提出。採用から約2年後、男は事故を起こした。

 様々な業種で人手不足感が強まる中でも、介護業界は深刻だ。厚生労働省によると、昨年度の介護関係の職種の有効求人倍率は4・07倍で、職種全体(1・17倍)を大きく上回った。

 特に、男が採用された2021年夏頃は新型コロナウイルス流行の真っただ中で、家庭内感染の恐れがあることなどから、介護施設に入所を希望する高齢者が多かったという。

 事故が起きた施設の運営会社の神山光代表(53)は「元々人手不足だったが、コロナ禍の特需でより深刻になった。各施設を管理する本部から、人を派遣してもらっている状況だった」と振り返る。

 介護業界では職員の高齢化も進む。厚労省のまとめでは昨年、医療・福祉施設などで働く介護職員の平均年齢は44・4歳で、10年前から6歳ほど高くなった。