休業人気ラーメン店、元常連客が継承…病の店主からレシピ譲り受け「以前と変わらない味」で好評

AI要約

2022年末に休業した人気ラーメン店が、元常連客が店を継いで復活。熱意に打たれた店主が経験と技術を惜しみなく伝授し、新たな店もファンを獲得。

店主の病気で休業した山形県のラーメン店「らーめん天将」の経緯。梅津さんの心筋梗塞発症、後継者不在の中での休業。

元常連客の佐藤さんが後継者として登場。センターの支援を受けて経営ノウハウを習得し、新たな店「二代目天将」を再オープン。

 店主の病気などで2022年末に惜しまれながら休業した人気ラーメン店が、元常連客が店を継ぐことで復活した。熱意に打たれた店主は自らの経験と技術を惜しまず伝授。「二代目」の店も順調にファンを獲得している。(須永光)

 山形県中山町長崎のラーメン店「らーめん天将」は1998年に開業し、自家製麺を使ったつけ麺が人気メニューだった。多いときは1日約130人の客でにぎわうなど経営は順調だったが、2020年に店主の梅津清さん(69)が心筋梗塞(こうそく)を発症し、体力的な問題から店を続けるのが難しくなった。

 2人の子どもは独立し、後継ぎを見込める人はいない。だが、常連客から「やめないでほしい」と言われ、「自分でも惜しくなった」。第三者への事業承継を考え始め、中山町商工会に事業の譲渡を相談した。県の外郭団体が運営する「県事業承継・引継ぎ支援センター」(山形市)を紹介されたが、後継者は見つからず、22年末に休業した。

 「あの味をなくすのはもったいない。自分が後を継ぎたい」。その思いが心の中で大きくなっていったのは、常連客だった佐藤宏一さん(44)だ。小麦の香りがするモチモチの麺が好きで、つけ麺などをよく食べていた。当時は会社員で、周囲から「リスクが大きい」と心配されたが、自分が継ごうと決意を固めた。

 佐藤さんは23年10月に同センターの「後継者人材バンク」に登録。梅津さんを紹介してもらい、話し合いを重ねた。

 梅津さんは「店の味を知る常連客に引き継いでもらうのが一番いい。熱意もあり、彼に譲りたいと思った」と振り返る。

 佐藤さんはセンターの職員から融資制度の紹介などを受け、梅津さんから経営のノウハウや調理法などを学んだ。手書きのレシピノートを譲り受け、3か月かけて調理法を学んだ後、今年4月、既存の店舗を使う形で店名を「二代目天将」に改めて再オープン。初めの1週間は梅津さんも店に顔を出し、不慣れな新店主をサポートした。