中間組織の存在意義、ガバナンス効かせ信頼回復を 宰相の条件④「派閥」

AI要約

自民党総裁選が告示される2日前、副総裁の麻生太郎は、幕が上がりつつある中で混沌とした状況を語った。

派閥パーティー収入不記載事件を契機に、5つの派閥が解散し、9人の候補が乱戦する中、派閥の影響力は依然として残っている。

菊澤研宗教授は、派閥が政治資金不正事件などで批判を浴びる中でも、派閥的な存在が政治の意思決定に重要であり、新たな形態で再出現する可能性を指摘している。

中間組織の存在意義、ガバナンス効かせ信頼回復を 宰相の条件④「派閥」

「幕が上がりつつあるのだが、芝居はどうなるかもわからないし、主役も決まっていないし、配役もそろっていない」

自民党総裁選が告示される2日前、副総裁の麻生太郎(83)は、今回の戦いの展望をこう語っていた。

派閥パーティー収入不記載事件を契機に、党内にあった6つの派閥のうち、5つが解散を表明。政治団体としての解散届を総務相へ提出した派閥もある。過去最多の9人が立候補する乱戦となった事実が、「派閥なき総裁選」の混沌を象徴しているともいえる。

とはいえ、その影響力が完全に消え去ったわけではない。

唯一残った派閥である麻生率いる麻生派(志公会)は一本化は見送ったものの、多くの議員が同派所属のデジタル相、河野太郎(61)を支援。20人の推薦人のうち18人を占めた。

幹事長の茂木敏充(68)の推薦人も、解散を表明したとはいえ、茂木派(平成研究会)の議員が14人に上る。解散した旧岸田派(宏池会)出身の官房長官、林芳正(63)を推すのは、同派の面々が中心だ。

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「派閥は本来、価値観を共有する者たちが集った政策集団だ。ところが、ひとたび自分たちの利益を追い始めると、政策論が抜け落ちていき、利益の追求に歯止めが利かなくなる」。慶応大名誉教授の菊澤研宗(経営学)は、こう指摘する。

今回の不記載事件では、販売ノルマを超えたパーティー券の売り上げが派閥側から議員側に還流し、政治資金収支報告書に記入されず〝裏金〟となっていたことが、大きな批判を浴びた。

過去にも「政治とカネ」の問題が持ち上がるたびに、解消が叫ばれてきた派閥。ただ、現行の政治団体としての派閥がなくなるとしても、新たな「派閥的なもの」が再び形成される可能性は、極めて高い。

その理由の一つは、政治に必要なさまざまな意思決定の過程で、派閥が重要な役割を担っているためだ。菊澤は「『熟議』と『独裁』の中間に位置する存在が派閥だ」と解説する。

集団を構成する一人一人に意見を聞き、ときに説得し、利害の調整を図る。全員が納得の上、物事を決められれば不満を抑えられるが、そうした熟議には、膨大な時間と手間がかかる。