「ほとんどは社会に出ることしか眼中にない」 無期懲役囚が明かす刑のリアル

AI要約

美達大和氏は無期懲役囚として30年以上服役しており、仮釈放の機会を自ら捨て、獄中から多くの著書を出版している。彼は殺人事件を反省し、被害者への謝罪の気持ちを持つために獄死を決めた。

無期懲役刑を受ける過程で、美達氏は物事の受けとめ方が多様化し、ある程度の妥協や深い省察を持つようになったと述べている。有期刑との比較で、無期懲役刑によって特有の変化が生じたとも語っている。

美達氏の行動や考え方は倫理的な対称性や社会への影響を考慮し、自己の信条に基づいて人生を終えようとする姿勢が垣間見える。その決断には逡巡や迷いはなく、徹底的な決意が感じられる。

「ほとんどは社会に出ることしか眼中にない」 無期懲役囚が明かす刑のリアル

現役の無期懲役囚として受刑者や刑務所の実態を塀の中から社会に明らかにしている人がいる。自ら仮釈放の可能性を放棄したと公言する美達大和(みたつ・やまと)氏。服役中の彼との手紙のやり取りを通じて、無期懲役という刑罰が持つ意味を考えた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

美達氏は2件の殺人事件を起こし、ある刑務所で30年近く服役している。美達大和というのはペンネームで、獄中から多くの本を出版している。

著書では、受刑者の多くが自分の起こした事件に向き合わなかったり、被害者への謝罪の気持ちを持たなかったりすることなど、塀の中の実情を詳細に記している。

また、無期懲役囚にとって唯一の希望ともいえる「仮釈放」のチャンスを自ら捨てたとも説明している。

そんな美達氏に、獄死することを決めた理由や無期懲役刑が加害者に与える影響について尋ねた。

以下、美達氏とやり取りした手紙の一問一答を掲載する。

(1)ーー無期懲役囚として、なぜ仮釈放を望まずに生きながら刑務所で人生を終えようと決めたのか?

反省した結果、自分にも非があり(自己の信条により他者の生命を奪う事は断じて許されないと)、相手が生き返らぬ以上、自己を殺すか、人生を捨てるとせねば倫理の対称性の点からも納得できず、出ない(社会での人生を捨てる)としました。

今、生きているのは、善行も行ってから終わろうという意味で、被害者遺族の年齢を鑑み、その人の死より早く人生を終える事にしています。全く逡巡も迷いもなく、さっと決めました。

(2)ーー自身は無期懲役刑を受けてどのような変化があったか? その変化は無期懲役という刑罰によってしか実現されなかったと思うか?

物事の受けとめ方につき、複眼的、多様性が加わりました。また、仮に自分が正しく、相手に非がある場合でも、「ちょっと待て。世の中にはこういう人もいるのだ。ま、いいか」となる事が増えています。

「ま、いいか」は妥協的で大嫌いな言葉・態度でしたが、今はこだわりません。有期刑なら、社会で次にどうするのが、また野心マンマンになるのは明白なので、深い反省、省察はなかったのではないか、と捉えています。