母のみそ汁に涙「味で大げさに感動できるようになった」 フードエッセイスト平野紗季子さんの体験

AI要約

食に関するエッセイ集「ショートケーキは背中から」を発表したフードエッセイストの福岡市東区出身の記事家。ニューヨーク留学時の体験から食の感動を書くことをライフワークとしている。

新刊では「ごはん100点ノート」を収録し、様々な料理から感動を受けたエピソードを綴っている。

食べながら感じたことをメモし、食べ物を通じて世界を理解したいと考えるエッセイ家の33歳。

母のみそ汁に涙「味で大げさに感動できるようになった」 フードエッセイスト平野紗季子さんの体験

 小学生のときに「食日記」をつけて以来、食について書き続けてきた。大学在学中にブログが話題になって文筆活動を始め、最初の著書から10年。8月に新刊エッセー集「ショートケーキは背中から」を出した。

 福岡市東区出身で、幼稚園の頃から東京に暮らす。今はフードエッセイストとして「何かを食べ、感動して書くこと」をライフワークとしている。大きな影響を与えたのは、高校時代にニューヨークへ留学し、慣れない食事に疲れてしまった経験だ。帰国した際、母のみそ汁に涙が出た。「自分の味覚が壊される体験をしたから、味で大げさに感動できるようになった」と振り返る。

 新刊には雑誌などの連載に加え、百の食にまつわる短い文章「ごはん100点ノート」を収録。フレンチやイタリアンからファストフードのハンバーガー、コンビニの冷凍鍋焼きうどんまで取り上げた。うどんのだしに<ざぶんと丸ごと救われ>、絶妙な焼きなすに<火の神と水の神と土の神、みんな宿っちゃってるなあ!>と興奮。おいしさを表す言葉は無尽蔵だ。

 文章を書くに当たり、食べながら感じたことは逐一メモする。「味はすぐに忘れてしまう。感想が『おいしい』だけだと、後でひもとくことができない。『おいしい』の種類を分類して保存する感覚」だと言う。エッセーでは<きっと私は世界を理解したい。そのための手段が、私の場合は、食べものだった>とつづった。

 タイトルになった一編の発端は、三角形のショートケーキをとがった「先端」ではなく「背中」から食べたら、おなかが満たされるとともに口に入れる量が減っておいしく食べられる、と気付いたこと。「おいしいものばかり食べてたら驚かなくなるでしょう、と聞かれるけどむしろ逆。食べれば食べるほど細部に感動できるようになった」

 33歳。全国展開する福岡発のファミリーレストラン「ロイヤルホスト」が幼少時の食の思い出だ。

 (諏訪部真)

 ◇「ショートケーキは背中から」は新潮社刊。1870円。