米、財政、改革姿勢に濃淡 自民総裁選候補の農業政策

AI要約

自民党総裁選での“ポスト岸田”を巡る論戦が激化。石破茂元幹事長が農政を巡って米政策の再検証を提起し、日本の農業政策に疑問を投げかけた。

石破氏は、農地減少と生産低下について問題提起し、農業政策の根本的改革を主張。一方、政府は価格転嫁を重視し、所得補償には慎重な姿勢を示している。

各候補者は農業予算や改革姿勢においても異なる立場を取っており、立場や考え方が多様化している。

米、財政、改革姿勢に濃淡 自民総裁選候補の農業政策

 “ポスト岸田”を巡って論戦が本格化した自民党総裁選。農政では各候補者とも食料安全保障を重視する姿勢は共通するが、石破茂元幹事長が米政策の再検証を提起し、一石を投じた。これまでの発言から、各候補者の“カラー”を探った。

 「日本だけが予算を使って生産を減らしてきたということは、本当に正しかったのか」

 石破氏は12日の総裁選出陣式終了後、記者団に対し、こう訴えた。米を念頭に置いた発言だ。

 石破氏は「日本だけが農地を減らし、農業生産を落としている」と問題提起。農相時代に唱えた米の生産調整見直しを再び検証する意向を示し、「直接所得補償という概念も念頭に置きながら、今の時代に適合する農業政策、抜本的な農政改革を断行する」と述べた。

 ただ、政府は、需要に応じた生産を阻むといった理由で、所得補償を否定してきた。食料・農業・農村基本法改正案の審議でも、生産費の価格転嫁を重視。野党が求めた所得補償に難色を示している。

 一方、林芳正官房長官は、政府方針通り、価格転嫁で米生産者の所得を確保していきたい考えだ。10日の政策発表会見では、資材高騰で再生産が危ぶまれると指摘。消費者の理解を得ながら適正な価格形成を法制化するとした。

 農業予算など財政の考え方にも差が出た。

 河野太郎デジタル相は「財政規律を取り戻す」との立場。8月下旬の会見では、農業予算を巡り「効果がないものに予算を付けても結果がついてこない」と指摘、費用対効果を考慮すべきだとした。12日の演説でも「政府が補助金を付けたら、その産業が発展するのか」と疑問を呈した。

 これに対し、小林鷹之前経済安保担当相は、「経済は財政に優先する」との姿勢。財務省出身ながら積極的な財政支出を示唆する。10日の会見では「農業予算は増やしていく必要がある」と明言した。

 改革姿勢でも候補者間に温度差がある。

 小泉進次郎元環境相は「農業の構造転換を図るための施策を集中的に実施する」と、政府方針通りの“模範解答”を示しており、現時点で農業改革に触れていない。ただ、父・純一郎元首相の「聖域なき構造改革」になぞらえた「聖域なき規制改革」が旗印。12日の出陣式では「迷ったらフルスイングで頑張りたい」と力を込めた。

 他方、林氏は10日の会見で、改革は必要との認識を示しつつ「納得してもらいながら先に進んでいくプロセスは大事にしたい」と述べ、合意形成を重んじる姿勢を示している。

(松本大輔)