推薦人「裏金議員」隠し?出陣式出ても名前は出さず 自民党総裁選

AI要約

過去最多9人が「ポスト岸田」の座を懸けて争う自民党総裁選が12日、幕を開けた。世論の批判をかわすために「裏金議員」を推薦人から外した陣営が複数あった。政治改革の具体論はかすんだ中、トップ争いが始まった。

「力を合わせて、ガンバロー」―自民党総裁選における各候補の推薦人の選出や演説会から、裏金問題が焦点となる中、改革の志が試されている。

推薦人の選出や候補者の演説を通じて、裏金問題への対応や政治改革への取り組みが浮き彫りになる。選挙の行方が注目される。

推薦人「裏金議員」隠し?出陣式出ても名前は出さず 自民党総裁選

 過去最多9人が「ポスト岸田」の座を懸けて争う自民党総裁選が12日、幕を開けた。派閥の裏金事件を受け「政治とカネ」で信頼回復できるかが焦点だ。世論の批判をかわすために「裏金議員」を推薦人から外した陣営が複数あった。所見発表演説会では持論の政策や実績アピールが目立ち、政治改革の具体論はかすんだ。大なたを振るうことができるトップは誰か。過去最長15日間の戦いが始まった。

 「力を合わせて、ガンバロー」。12日午前の党本部。石破茂元幹事長の出陣式で、衛藤征士郎衆院議員=大分2区=は拳を突き上げた。8月末の選対初会合から参加して支持議員集めに奔走してきたが、推薦人に名前はなかった。

 安倍派の最高顧問を務めた衛藤氏。2019~21年、派閥からの還流分1070万円を政治資金収支報告書に記していなかった。推薦人にならなかったのは「(裏金は)関係ない。譲った」と本人。陣営関係者は明かす。「(裏金で)迷惑をかけたくない思いが強く、選対幹部と本人が話し合って決めた」

 不記載があった自民現職議員らは計85人。9候補の推薦人各20人のうち、この「裏金議員」が13人と最多だったのは高市早苗経済安全保障担当相だ。加藤勝信元官房長官が4人、茂木敏充幹事長が2人と続き、小泉進次郎元環境相と上川陽子外相が各1人。石破氏を含む4候補はゼロだった。

 石破氏の会合から1時間半後。党本部で気勢を上げた小林鷹之前経済安保相の陣営には、福田達夫元総務会長、松川るい参院議員ら少なくとも6人の「裏金議員」が顔を出した。みな推薦人の名簿に上がっていない。うち1人は会場の片隅で「(推薦人になっても)裏金議員とやじられる日陰者だ」と苦笑した。

 推薦人名簿の「ゼロ」は、「必死に隠し切った」(ベテラン議員)結果。背景には、小林氏が裏金事件で内閣や国会の役職を外された安倍派議員らの処遇見直しを訴え、批判された経緯があるとみられる。中堅は「推薦人は見え方重視」とあけすけに語った。

 一方、推薦人が「裏金議員」だらけになった高市氏。派閥の中で最も「裏金議員」が多かった安倍派議員の支援が厚いため、陣営関係者は「(推薦人から)外すのは難しかった」。出馬表明が遅れた加藤氏や上川氏らは推薦人集めに苦労したとみられ、「隠したくても、隠し切れなかったんだろう」(他陣営の中堅)。

 午後党本部で行われた演説会は1人約10分で、小林氏は「政治とカネ」にほとんど言及しなかった。加藤氏と茂木氏が政策活動費の在り方に触れ、高市氏と林芳正官房長官が政党交付金の使途見直しを訴えた程度。他は「自民党を変えられるのは誰かが問われる選挙」(小泉氏)、「公平公正な自民党でありたい。総裁として全力を尽くす」(石破氏)と抽象論が目立った。一切触れない候補もいた。

 「裏金議員に支えられ、改革できるのか」。記者から問われたある陣営幹部は怒気を帯びた声で答えた。「ええ、しますよ」

 (東京支社取材班)