モアイ像のイースター島、DNA分析で通説覆す 文明崩壊なかった?

AI要約

イースター島では従来の「文明崩壊説」に異論が唱えられている。古代住人のゲノム調査から、劇的な人口減少の証拠が見つからず、文明が崩壊したという説に疑問が投げかけられている。

研究チームは、イースター島の人口は増え続けており、厳しい環境状況の中でも豊かな文明を維持できていたことを指摘。資源の過剰消費による文明崩壊説を否定している。

さらに、古代イースター島の住人と南米先住民の混血が1250年から1430年に始まり、ポリネシア人が南米大陸と交流していた可能性が示唆されている。

モアイ像のイースター島、DNA分析で通説覆す 文明崩壊なかった?

 モアイ像で知られる南太平洋の孤島・イースター島(現地名ラパ・ヌイ)は、人口が過剰に増えて森などの資源を使い果たした揚げ句、争いが起きて文明が崩壊した――。この従来の「文明崩壊説」に異を唱える論文が11日、英科学誌ネイチャー(https://doi.org/10.1038/s41586-024-07881-4)に載った。古代住人のゲノム(全遺伝情報)を調べたが、劇的な人口減少を示すような証拠は得られなかった。

■絶海の孤島、資源の過剰消費で崩壊?

 イースター島は、最も近いポリネシアの有人島から東へ2千キロの絶海の孤島。大昔にポリネシア人が住み着いたとされ、約1千体の巨大モアイ像がつくられた。かつて1万5千人以上の住人がいたが、大量の木材や人を必要とするモアイ像の建造を競い合うことなどによって資源不足や争いが起き、17世紀に文明崩壊に至ったとの説が有名だ。資源の過剰消費に対する教訓的な話として取り上げられてきた。

 デンマーク・コペンハーゲン大のビクトル・モレノ・マヤール助教(進化遺伝学)らは、1670~1950年に島に住んでいた15人の遺骨のゲノムを調べ、劇的な人口減少を意味する遺伝的多様性の低下を示す特徴を探した。だがその証拠はみられなかった。

 研究チームは「ヨーロッパ人が島に到着する18世紀まで人口は安定して増えていることを示していた」と指摘。厳しい環境破壊に直面しながらも、数千人規模でモアイ像をつくるほど豊かな文明を維持できていたとして、従来の文明崩壊説を否定している。

■コロンブスより先にアメリカ大陸到達?

 興味深い可能性も浮上した。イースター島の古代住人のゲノムには南米の先住民の遺伝的特徴が残っており、両者の混血は1250年から1430年の間に始まったとみられることがわかった。

 従来、混血はヨーロッパ人が島を訪れた1722年以降の植民地活動で進んだとされてきた。今回の研究は、コロンブスが北アメリカに到達した1492年より前に、ポリネシア人が3700キロ離れた南米大陸と海をまたいで交流していた可能性を示している。