「疲れ果ててしまわないか心配」前倒しで長期化する就活…背景に2年前の“合意文書”

AI要約

大学生の就職活動が早まっており、夏休みに企業のインターンシップ参加が標準化。就職活動の負担が懸念される。

インターンシップ申請が早期化し、内定を得るまで活動が長引くことも。早めの内定が得られない学生も増え、心配の声が上がる。

文科省合意文書によりインターンシップの重要性が高まり、学生のミスマッチ防止に役立つ一方で「内々定」の加速も懸念されている。

「疲れ果ててしまわないか心配」前倒しで長期化する就活…背景に2年前の“合意文書”

 大学生の就職活動のスタート時期が早まっている。人手不足感を背景に早期に優秀な人材を確保しようとする企業側の動きが活発なためで、3年次の夏休みに企業のインターンシップ(就業体験)に参加するのは「標準」となった。内定を得られなければ活動は長期に及び、学業に専念できる時間が削られるなど、負担の大きさが懸念される。

 長崎大キャリアセンターによると、インターンシップの申請は5、6月に締め切られるケースが多い。人気企業だと書類審査で落とされることもあり、志望動機などをしっかりと書き込む必要があるという。

 センターではこれまで4月に就職ガイダンスを実施してきたが、2年次が終わるタイミングでのゼロ次会(入門編)の導入も検討課題に挙がる。ただ早めの内定が得られず、就職活動を長引かせる学生が出かねない。担当者は「疲れ果ててしまわないか心配だ」と打ち明ける。

 前倒しの背景にあるのが、インターンシップ制度の在り方を文部科学省など関係3省が定めた合意文書(2022年6月)。学生が5日以上の就業体験をした場合、企業はその際の評価を採用選考で使える-とする内容だ。

 学生にとっては企業の中身をより深く知ることでミスマッチの防止が期待できる。一方で正式な採用選考が始まる前の「内々定」につながるケースもあり、「青田買い」を加速させたとの指摘もある。大学関係者は「3年次の夏のインターンシップが、事実上の就職活動のスタートとなっている。合意文書がそれを決定づけた」と言う。

 長崎国際大は昨年から3年次の夏に企業フェアを開催。国際観光学科に対する観光・航空業界からの引き合いが強いという。7月13日に学内であったフェアには、JR長崎駅近くで近年相次ぎ開業した「ヒルトン長崎」「長崎マリオットホテル」など16社がブースを構えた。企画した一人、森尾真之・人間社会学部准教授は「都会のような合同説明会やインターンは地方にはない。今回の取り組みは、学生の意識を高めてもらうのが目的だ」と話す。

 学業にいそしみ、自由を謳歌(おうか)できるはずの学生時代。長崎県立大就職課は「売り手市場とは言っても、選考する側が圧倒的に強い。結局は、企業の動きに合わせて準備せざるを得ない」と語った。 (重川英介)