いづれの御時にか…「源氏物語」爆誕! どこから書き始めた?起筆論は エピソード「ゼロ」があったのでは
紫式部の源氏物語の執筆について、実際にどこから書き始められたのかは分かっていない。
起筆論として、幅広い研究が存在し、第十二帖「須磨」や第二帖「帚木三帖」などさまざまな説がある。
源氏物語には多くの研究者が関わり、広範囲にわたる研究が行われている。
「いづれの御時にか……」の書き出しでも有名な、紫式部の源氏物語。大河ドラマ「光る君へ」では、ついにまひろが源氏物語の執筆を始めました。実際には、どこから書き始められたかは分かっているのでしょうか。平安文学を愛する編集者・たらればさんと、ドラマの描き方を語り合いました。(withnews編集部・水野梓)
withnews編集長・水野梓:ついに、後の紫式部・まひろ(吉高由里子さん)が『源氏物語』を書き始めましたね…!
寵愛していた定子さまに思いをはせ、『枕草子』に夢中な一条天皇(塩野瑛久さん)。自分の娘・彰子に一条天皇のお渡りもお召しもないことから、帝に奉るための物語を藤原道長(柄本佑さん)から依頼されるという流れでした。
たらればさん:史実としては、紫式部と藤原道長が幼い頃に知り合っていた可能性はほぼないと思うんですが、「二人は小さい頃に出会っている」という設定のこのドラマでは、「もし二人がソウルメイトで、手を取り合って書き出されたのであればこういう感じなんだろうな」と思いました。
創作論としても面白かったので、本作を見ている作家やクリエイターはエンパワーメントされたんじゃないかなとも思います。何かを創り出すこと、創作の機微がきちんと描かれていて、改めて作家が主人公の大河ドラマの面目躍如だと思います。
水野:そもそも論になるんですけど、「『源氏物語』はどこから書き始めたか」というのは分かっているんですか?
たらればさん:いえ、分かっていません。『源氏物語』が、どこからどうやって書き出されたのか、というのは、「起筆論」といって幅広い研究がある分野です。
確定的な記録や証拠は見つかっていないので、研究者がそれぞれ根拠だと考えられるものをもとに百花繚乱の議論を展開しています。
有名なところでは、たとえば第十二帖「須磨」から書き始めた、という説。琵琶湖に浮かぶ月を見ながら石山寺で書き始めたのではないか、という説です。
あるいは第二帖以降の「帚木三帖からじゃないか」という人もいます。「雨夜の品定め」「空蝉」「夕顔」のところですね。ほかにも第五帖「若紫からでは」という説もあります。
水野:分かっていないし、いろんな説があるんですね。
たらればさん:枕草子派としてうらやましいのが、源氏物語ってたくさんの研究者が幅広いジャンルで研究していて、「こんなところまで分厚く研究してるの!?」っていうものがあるんですよねえ……。