終戦直後の樺太の悲劇 「九人の乙女」命日に慰霊 北海道稚内市

AI要約

南樺太の真岡郵便局で自決した9人の女性電話交換手の命日に、稚内市で平和祈念祭が行われた。

過去の悲劇を思い出し、参列者が黙祷し、乙女達に一輪菊を手向けた。

遺族や関係者が参列し、戦後80年に向けての希望や感謝の気持ちが述べられた。

終戦直後の樺太の悲劇 「九人の乙女」命日に慰霊 北海道稚内市

 終戦間もない南樺太(現ロシア・サハリン南部)の真岡郵便局で、旧ソ連軍の陵辱を免れるため、自ら命を絶った9人の女性電話交換手の命日の20日、北海道稚内市の稚内総合文化センターで今年も平和祈念祭が営まれた。

 79年前、南樺太西岸の真岡(現ホルムスク)では終戦を伝える「玉音放送」の5日後、旧ソ連軍が洋上から艦砲射撃を開始。兵士が次々上陸し、日本兵と交戦となる中で、9人は青酸カリを飲んで自決した。「九人の乙女」の悲劇として伝えられている。

 62回目の今年は日本郵政やNTT東日本などの関係者、稚内高校の吹奏楽部の生徒を含む市民ら約250人が参列。9人の遺影が飾られた祭壇を前に参列者が黙禱(もくとう)し、全員で一輪菊を手向けた。

 式辞の中で、工藤広市長は、全国樺太連盟(2021年解散)の最後の会長を務めた西本美嗣さんが今年2月、87歳で亡くなったことを告げた。

 西本さんは真岡生まれで、毎年のように平和祈念祭に参列していた。全国樺太連盟解散の2年前、サハリンを望む稚内公園に「望郷の樺太」の碑を建立。戦後、日本人が現地に望郷の碑や鎮魂の碑などを建てたが、高齢化で渡航が難しくなり、碑に全23基の碑銘を刻み、稚内からも祈りを捧げられるようにした。

 乙女の関係者としては、今年も乙女の同僚で11年前に他界した金川一枝さん(享年84歳)の次女中間真永さん、乙女・沢田キミさんのめいの義姉の土田慶子さん(78)が参列した。

 土田さんは昨年11月、九州から旭川に引っ越し、7年ぶりに訪れた。土田さんは「来年も来られるかどうかと思うと、今日参列できて、胸がいっぱいです。命日の日に慰霊を続ける稚内市に感謝したい」。中間さんは「来年の戦後80年に稚内で九人の乙女の舞台ができれば」と話していた。(奈良山雅俊)