タワマンの大規模修繕計画「3億円」も過大に費用計上か...住民有志の見積もりで判明!5億円の工事費が、計画では「8億円」にされていた【マンション管理クライシス】

AI要約

タワーマンションの大規模修繕工事において、高額な工事費用が疑問視される事例があった。管理組合が独自の見積もりを取得し、実際の工事費用が計画よりも格段に安価であることが判明した。

管理会社や設計コンサル会社の主導で進められるタワーマンの大規模修繕では、適正価格よりも高額な工事費が見込まれることが多いが、適切な相見積もりが実施されればコストダウンが可能である。

住民側が疑問を持ち、他の見積もりを取得したことで適正な価格で工事が実施されるケースがあり、長計からの必要のない金銭負担を避けることが重要である。

タワマンの大規模修繕計画「3億円」も過大に費用計上か...住民有志の見積もりで判明!5億円の工事費が、計画では「8億円」にされていた【マンション管理クライシス】

高額化しがちと言われるタワーマンションの大規模修繕工事。これを見据えて、毎月の修繕積立金も年々高額化している。しかし、当初からの工事費用の計画に疑問を持った、あるタワマンの管理組合では、管理会社とは別ルートで見積もりを取り直した。すると、その“常識”とは異なる結果が出てきた──。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて情報を参考にしてください)

関東の築20年、350戸のオフィス店舗を含む複合型タワマン。1回目の大規模修繕工事の計画が進められてきたが、管理会社が策定していた高額な工事計画を巡って、疑問に思った管理組合では、独自の見積もり取得に奔走していた。そして、今年に入り、計画より格段に安価に工事ができることが判明したという。

同タワマン大規模修繕工事の見積もり取得をサポートした、修繕工事の支援サービス「スマート修繕」代表の豊田賢治郎氏がいう。

「このタワマンの長期修繕計画においては当初、8億円(税込み)の工事費を見込んでいました。ただ、複合であることやタワマンであることを鑑みても、『割高では?』と感じる金額帯でした。そこで管理組合では『管理会社以外の提案も受けて、妥当性を確認したい』ということになり、我々がサポートすることになったのです。

住民アンケートによる要望の反映や、建築士による建物診断、ドローンを活用した外壁調査のうえで、複数の工事会社から相見積を取得したところ、工事の金額は約5億円に収まりました。施工範囲は外壁塗装のほか、シーリングは長周期化対応などフルスペックの工事仕様で、施工会社は業界トップクラスの大手となります。

この費用は戸あたり約140万円であり、通常のタワーマンションの大規模修繕費用としてはリーズナブルで、一般的な中規模マンションより少し高い程度の金額となります」

長期修繕計画(長計)は、毎月の修繕積立金算定の根拠とするため、将来的な工事費をあらかじめ見込んでおくものだ。資金不足に陥らないように、多めに算定して徴収するのは一理あるようにも思える。

しかし、仮に実際の工事費より60%も多く見積もっていたとすれば、さすがにどんぶり勘定も甚だしく、営利的な“水増し”を疑われても仕方のない水準とも言えるだろう。管理会社は工事からも収益を得るが、その管理会社自身が長計を作成しており、“お手盛り”になりやすい。

そして高額な工事費の見込みは、修繕積立金の形で、必要のない金銭負担を所有者に強いて、経済的ダメージをもたらしてしまう。また、高額な維持費(積立金)はリセールバリューという観点からも、物件の資産性に悪影響を及ぼしてしまうことにもなる。

今回は、たまたま高額な計画に疑問を持った住民側が別ルートでの相見積を取得したことで、“実際の工事費”が判明して事なきを得たが、そのまま管理会社が策定した長計に従って計画を進めていたら、必要のない割高な工事費を支払う可能性もあった。

前出の豊田氏によれば、タワマンの大規模修繕は管理会社や設計コンサル会社の主導で事業を行う一般的な進め方では、戸あたりで平均200万円程度になるケースも多く、所有者も「タワマンは高い」という先入観から、再検討をせずに受け入れてしまう実態があるという。

だが、冒頭の事例のように、フェアな相見積もりを実施すれば、本来の適正価格で工事が実施でき、管理会社策定の長計からは大幅にコストダウンできる可能性があるのだ。