大阪ミナミ「戎橋のチェロ弾き」、逮捕はやり過ぎ?SNSで賛否…刑事弁護士は「違法な逮捕」の可能性指摘

AI要約

自称音楽家の男性が大阪ミナミの道頓堀川にかかる「戎橋」で許可なくチェロ演奏を行い、逮捕された事件について報告。

男性は数日にわたり道頓堀川で演奏を行い、交通に影響を与えたことから逮捕された。警察が口頭で警告し、誓約書も書かせたが改善せず。

本件は道路交通法違反とされ、逮捕状請求されたが、裁判官の判断で逮捕が必要ないと認められる場合もある。

大阪ミナミ「戎橋のチェロ弾き」、逮捕はやり過ぎ?SNSで賛否…刑事弁護士は「違法な逮捕」の可能性指摘

大阪ミナミの道頓堀川にかかる「戎橋」の上で、許可なくチェロを演奏したとして、自称音楽家の男性がこのほど、道路交通法違反(無許可道路使用)の疑いで、大阪府警に逮捕された。

産経新聞デジタルや読売新聞オンラインなどによると、男性は7月24日午後7時35分ころ、大阪市中央区の戎橋上で、警察署長の許可を受けずにチェロの路上ライブをおこない、多くの人を集めて交通に著しい影響を及ぼした疑い。逮捕は7月31日付。

7月1日からほぼ毎日、戎橋上でチェロを弾き、多い時には100人もの人だかりができていたとされ、通行人らから110番通報が16件寄せられていたという。警察は口頭で数十回警告したほか、演奏しないとする誓約書も5通書かせたが、それでも演奏をやめなかったので、今回の逮捕に踏み切ったようだ。

路上ライブでの逮捕は珍しいが、このような事情があったことから「橋の上に人が集まるのは危険ではないか」「逮捕は仕方ない」という声もSNS上では見られる。一方で、身体を拘束するまではやり過ぎではないかという意見もある。路上ライブの逮捕は妥当なのか。刑事事件に詳しい中原潤一弁護士に聞いた。

――報道でわかることを踏まえたうえで、今回の逮捕は妥当なのでしょうか

まず、逮捕の条文について確認しましょう。

刑事訴訟法199条1項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる」と規定しています。

これがいわゆる「通常逮捕」と言われる形式の逮捕です。報道によると、今回の事件では、7月24日午後の出来事について、後日に逮捕しているようですので、この「通常逮捕」で逮捕されたと思われます。

次に、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」という要件に当たるかを考えましょう。

道路交通法76条は「禁止行為」を定めています。

今回の事件では、「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為」(同条4項7号)の禁止行為に該当すると判断されたと思われます。

そして、同法76条4項の規定に違反した場合は、5万円以下の罰金に処するという罰則が定められています(同法120条1項10号)。ですので、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」という要件は満たしていると思われます。

ただし、警察が逮捕状を請求した場合でも、裁判官は、罪証隠滅および逃亡のおそれがないといった「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない」と規定されています(刑事訴訟規則143条の3)。