NATOナンバー2前にピアノ弾く、所蔵ワインも提供…事務総長「私がそこにおらず残念」 国際舞台駆けた外交官 大江博氏(15)

AI要約

元駐イタリア大使の大江博氏が外交の舞台裏を語る。防衛省やミャンマーでの出来事、日本との外交協議について述べる。

大江氏は防衛省次長として日米関係以外の業務を担当し、ミャンマーでは厚遇を受ける。さらに、ヤンゴンで最高位の人物との会談を果たす。

欧州の国との外交協議を通じて、日本の歴史や戦争勝利に対する尊敬を垣間見る。ジョージアなどが日本との協議開始を熱望していたことも示唆される。

NATOナンバー2前にピアノ弾く、所蔵ワインも提供…事務総長「私がそこにおらず残念」 国際舞台駆けた外交官 大江博氏(15)

公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。ピアニスト、ワイン愛好家として知られ、各国に外交官として赴任した大江博・元駐イタリア大使に異色の外交官人生を振り返ってもらった。

■防衛省、日米関係に傾注

《2009年1月、防衛省に出向し、防衛政策局次長に就任した》

防衛省は当時、エネルギーのほとんどを日米関係に向けており、他の役所の人間に日米関係の業務を任せたくありませんでした。私は日米関係以外を多く任され、自由に仕事をさせてもらいました。

私はカンボジアの首都プノンペンに行き、あちらの防衛当局幹部も東京を訪問。仲良くなったのがフン・セン前首相の息子、フン・マネット氏です。彼は私のカウンターパートでしたが、昨年、首相に就任しましたね。

■「レッドカーペット」の厚遇

佐々江賢一郎外務次官から、「ミャンマーは軍政国家だ。現地駐在の大使より大江君が向こうに行った方が要人に会えるのでは」と助言され、ミャンマーを訪れたこともあります。この国では防衛大臣が国家主席を兼任する。私はさっそく防衛副大臣に面会を申し込みました。

面会の申し込みは通常、高位の人に出すと、下位の人と会うことが多い。ところが、私が副大臣に申し入れると、「せっかく日本から来るなら、より高位の人に会ってほしい」と言われ、国家序列4位の方と面会しました。

ミャンマーは当時、ヤンゴンからネピドーに遷都したばかり。ミャンマー政府は私のためにヤンゴンから専用機を用意してくれ、降機すると〝レッドカーペット〟が敷かれていました。

ミャンマーにとって、それまでの防衛省からの訪問者の中で私が一番、最高位の人間。日本の防衛省は日米関係に最重点を置いており、これまでミャンマーを訪問する高官がいなかったわけです。

■「日露戦争」勝利の日本を尊敬

《欧州の国で日本と防衛協議を始めたのは、旧ソ連のジョージア、スウェーデン、イタリア。どの国も協議開始を強く望んでいた》

私は、さまざまな国と協議するのは良いことだと考えていました。ロシアに08年、軍事侵攻されたジョージアは、日露戦争(1904~05年)で勝利した日本を「ロシアとの戦争で唯一、勝利した国」として大変、尊敬しており、協議を熱望していました。