【社説】南海トラフ情報 落ち着いて命守る備えを

AI要約

気象庁が南海トラフ地震臨時情報を初めて発表、専門家の警告や被害状況を伝えている

地震の想定震源域や対応策、被害想定などに関する情報を提供

災害弱者の対策やデマ情報への注意、帰省時の備えなど、具体的な対策を勧めている

【社説】南海トラフ情報 落ち着いて命守る備えを

 注意を促す情報を冷静に受け止め、命を守る備えを着実に進めたい。

 おとといの夕方、宮崎県南部で震度6弱を観測した地震を受け、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表した。

 有識者でつくる評価検討会の平田直会長は「普段より数倍発生する可能性が高い」と説明した。

 宮崎県や鹿児島県でけが人が出て、家屋倒壊などの被害も確認されている。そこへ耳慣れない巨大地震への注意を求められ、不安を感じる人も多いのではないか。

 政府や自治体は住民に分かりやすい情報を提供し、避難などの相談に応じてほしい。

 南海トラフ地震の臨時情報は2017年11月に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が起きたり、通常と異なる地殻変動を観測したりした場合に出す。

 今回の震源は想定震源域の日向灘で、推定規模がM7・1だったため「巨大地震注意」に該当した。M8・0以上の場合は避難準備や事前避難を求める「巨大地震警戒」にレベルが引き上げられる。

 検討会は、1週間程度は注意を続けるように呼びかけている。すぐに巨大地震が発生するとは限らないが、これまでも発生確率が高いと指摘されていた。落ち着いて対処することが肝要だ。

 南海トラフ地震臨時情報に対する国民の理解度はまだ低い。政府はこの機に周知し、地域ごとの避難行動や防災に生かすべきだ。

 南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から日向灘までの海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って発生するといわれる。政府の地震調査委員会は、M8~9級の地震が30年以内に起きる確率を70~80%としている。

 想定震源域には九州東岸が含まれる。政府の被害想定によると、一部地域は震度7の揺れに襲われ、宮崎県や大分県、鹿児島県の沿岸域では高さ10メートル以上の大津波が予想されている。

 いま私たちにできることは過度に恐れず、身近な備えを確かにすることだ。

 家具が倒れないように固定して、水や食料、薬を備蓄する。非常用バッグを手に避難場所までの経路を確認する。家族や頼れる人との連絡手段も決めておく。

 自治体のハザードマップを参考に、被害を思い浮かべながら進めると効果が増す。乳幼児や高齢者、障害者といった災害弱者を守る対策は入念な準備が欠かせない。

 帰省や旅行をする人が多いお盆の時期を迎える。移動先でも避難場所や災害関連情報の入手方法を調べておくといいだろう。

 近年の災害はデマが出回りやすい。とりわけ交流サイト(SNS)の情報は真偽を確かめて行動することを心がけよう。偽情報の拡散に加担してはならない。