長崎市長「むしろ紛争当事国を呼ぶべきだ」 平和祈念式典で一問一答

AI要約

長崎市が、長崎原爆の日の平和祈念式典でイスラエルを招待しない決定を巡り、米英の大使が欠席を表明した。市長は政治的な理由ではなく、平穏な雰囲気の下で円滑な式典を実施するためだと説明している。

市長は各国からの書簡を受け取り、決定に至った経緯や理由を説明。イスラエルの大使招待を差し控えたことへの不満も示唆した。

被爆者の高齢化や厳しい環境下での式典の妨害を避けるため、式典の円滑な進行を重視している。将来的には各国の大使参加を期待している。

長崎市長「むしろ紛争当事国を呼ぶべきだ」 平和祈念式典で一問一答

 長崎原爆の日(9日)に開かれる長崎市の平和祈念式典に、市がイスラエルを招待しないことを巡って米英の駐日大使が相次いで欠席を表明したことについて、鈴木史朗市長が8日、市役所で報道陣の取材に応じた。主なやり取りは次の通り。【尾形有菜、樋口岳大】

 鈴木市長 日本を除くG7(主要7カ国)の各国及びEU(欧州連合)から書簡があった。書簡は7月19日の東京発で、郵送で受け取ったのは25日だ。

 主な内容は、イスラエル大使が式典に招待されない可能性があるとのことだが、招待しないことは結果的に、イスラエルをロシア、ベラルーシといった式典に招待されてない国々と同等にみなすことになり、遺憾で誤った印象を与える。イスラエルが除外されれば、式典にハイレベルの参加者を派遣するのは難しくなる、ということだった。

 私としては、決して政治的な理由でイスラエルの大使に招待状を発出しないのではなく、あくまでも平穏かつ厳粛な雰囲気の下で式典を円滑に実施したいという思いで今回の決定をした。大変苦渋の決断だったが、そういう考えで決定した、とこれまでも繰り返し説明している。G7各国及びEUから書簡をもらい、私が説明してきた内容がまだ十分に理解してもらえていない結果と理解している。

 最終的には、7月31日にイスラエル大使に対して招待状を発出しないと決定し、発表した。その後、日本を除くG7各国及びEU、イスラエルの大使や代理の方に対し、私から口頭で何らかの形で説明をさせてもらい、理解を求めた。

 正直、十分理解してもらえたとは思っていない。平行線のところもあるが、引き続き必要に応じて機会を捉えて粘り強く説明し、理解を求めたい。

 ――各国からの書簡について、これまで公表しなかった理由は。

 市長 相手国の立場もあり、相手国が書簡の公表を望んでいるのか確認が取れていなかったので、あえてその存在も含めて公表していなかった。

 ――日本政府や外務省などと相談して招待しないと判断したのか?

 市長 あくまでも長崎市として判断した。

 ――外交問題に発展する可能性がある中、相談はしなかったのか。

 市長 外務省との間では国際情勢をはじめ、常に情報共有している。事務的にもやり取りしている。

 ――イスラエルを招待しないことを理由に英米の大使は出席しないとしているが、判断に変わりはないか。

 市長 あくまでも政治的な理由ではなく、平穏かつ厳粛な雰囲気の下で円滑に式典を実施したいという中で、不測の事態の発生のリスクなどを総合的に勘案し、判断した。その判断に変更はない。

 ――被爆者の中には「紛争当事国が関わっている中、そもそも呼ぶべきではない」といった声も強い。不測の事態へのリスクというのが本当の理由なのか。

 市長 不測の事態(のリスク)、そして平穏かつ厳粛な雰囲気の下で円滑に式典を実施したいという理由だ。

 政治的な理由で逆に言えば、むしろ紛争当事国であるからこそ呼ぶべきだと私自身は思っている。ロシア、ベラルーシについても同様、紛争当事国を呼べないのは残念だが、呼んだことによる式典への影響を鑑み、総合的に判断して招待状の発出を差し控えた。

 ――X(ツイッター)などで市長の判断を支持する声も目立つ。改めて、なぜ式典を平穏に執り行う必要があるのか説明してほしい。

 市長 Xで私の投稿に対する、さまざまなコメントがあるのは承知している。私の決定にサポートの意思を表明している方もたくさんいることにとても勇気づけられているが、あくまでも今回の決定は政治的な理由ではない。そういう意味で、私の真意が十分に伝わっていないところもある。

 政治的な理由による判断ではないこと、平穏かつ厳粛な雰囲気の下で円滑に式典を実施したいという思いによることを改めて粘り強く、多くの方に理解してもらうよう説明に努めたい。

 明日、8月9日、長崎市にとって一年で一番大切な日だ。特に被爆者は平均年齢が85歳を超えている。私の両親も被爆者で両親とも90歳だが、両親は年齢も考慮し、この酷暑で式典に参加するのは無理だということで、自宅でテレビ中継を見る。中には、両親と同じぐらいの世代の被爆者の方が体にムチを打ち、酷暑の中、頑張って式典に参加する方もいる。

 そういう被爆者の方が参加される式典が、いろんな妨害により影響を受けてはいけない。支障が生じてはならないと思っている。そういう意味で、平穏かつ厳粛な雰囲気の下で円滑に式典ができるよう心を配っている。その一環として今回、このような判断をした。

 ――原爆を投下した当事国である米国の大使が来ないことへの受け止め方を。

 市長 これまでも米国に限らず、各国に大使の参加をお願いしていた。今回、先方から大使は参加できないと連絡があり残念だが、来年以降、大使に参加してもらえればと思っている。