反戦・反核「騒音集会」 広島市入園規制の効果はいかに あす8・6「原爆の日」

AI要約

広島市の平和記念公園で行われた原爆投下記念式典において、反戦・反核を訴える団体と市当局の対立が続いている。

市は今年、公園全体で大規模な集会を禁止する規制を打ち出し、団体側はこれに反発している。

背景には「表現の自由」という価値観と安全確保の必要性という対立がある。

反戦・反核「騒音集会」 広島市入園規制の効果はいかに あす8・6「原爆の日」

米軍の原爆投下から79年となる6日、広島市の平和記念公園内で恒例の記念式典が開かれる。近年、会場周辺では拡声器を使って大音量で「反戦・反核」を訴える団体の活動が常態化。市は今年、「静かな慰霊」を実現するため、大規模な集会を公園全体で事実上禁じる規制を打ち出した。一方、団体側は例年通りの活動を行うことを宣言しており、市は警戒を強めている。

市は昨年まで、式典会場周辺のみで入場規制や手荷物検査を実施していたが、今年は対象を公園全域に拡大。6日午前5時に公園利用者にいったん敷地外に出てもらい、同6時半から検査を経て公園内に入れるようにする。

入園にあたっては、拡声器やプラカードなどの持ち込みを禁止。警備が妨害された場合は、市公園条例が禁じる「迷惑行為」と判断し、退去命令を出す場合もある。

こうした対策に乗り出すのは、公園内の原爆ドーム周辺で、厳粛な追悼とはほど遠い〝騒動〟がこれまでも繰り返されてきたからだ。

「8・6ヒロシマ大行動実行委員会(大行動)」は毎年、数百人規模の集会を実施。過激派「中核派」活動家の関与も指摘され、拡声器で団体の主張を訴えてきた。

これに対抗する団体も数年前から出現し、「静かに」と書かれたプラカードを掲げて対峙(たいじ)。昨年は大行動のメンバーが、市職員を押しのけて強引に集会場所を確保しようとしたため、広島県警は今年2月、暴力行為法違反の疑いで中核派活動家の男5人を逮捕した。別に団体同士の衝突も起き、2人がけがをした。

松井一実市長は5月の記者会見で「市は安全を最優先に考えて対応策を講ずべき立場にある。(団体間の)衝突が起こりうるものが持ち込まれないようにチェックする」と述べた。

一方、大行動側は規制について「法的根拠が曖昧」と反発しており、交流サイト(SNS)では例年通りの集会実施を宣言している。

■対策躊躇の背景に「表現の自由」

平和を祈る6日の「原爆の日」に恒例化していた反戦・反核を訴える団体の大音量集会を巡り、広島市は今回からようやく、本格的な規制に乗り出す。これまで「表現の自由」との兼ね合いから対策に躊躇(ちゅうちょ)していたが、事態の悪化を受け、決断を迫られた形だ。

「広島から出ていけ」。昨年8月6日、平和記念公園内の原爆ドーム前では、式典に出席した岸田文雄首相を批判するシュプレヒコールが響いていた。一部参加者はヘルメットにマスクという、かつての学生運動の過激派をほうふつとさせるいで立ちだった。