多額の退職金を競馬につぎ込み、流し買い…収監前の「一発勝負」、結果の行方は!?

AI要約

1960年代ストリップの女王「一条さゆり」の生涯を振り返る。彼女の栄光と失墜、そして生活保護を受けるまでの波乱万丈な人生が描かれる。

彼女が収監を前に身辺整理をし、500万円の「退職金」を受け取るエピソード。この金額の背景には愛人関係や男性関係の整理が垣間見える。

ゲンが一条のために競馬に100万円を賭けるエピソード。ゲンと吉田のやりとり、勝負の結末が明かされる。

多額の退職金を競馬につぎ込み、流し買い…収監前の「一発勝負」、結果の行方は!?

1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、生活保護を受けるに至る。川口生まれの平凡な少女が送った波乱万丈な人生。その背後にはどんな時代の流れがあったのか。

「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。

『踊る菩薩』連載第67回

『ストリップと「歌舞伎や能」が同じ!?...「本番」までする踊り子達の「芸能意識」とは?』より続く

一条は収監を前に、身辺整理をした。喫茶店をたたみ、雇女をしていた「510」を辞めた。一条の証言では、「510」のオーナーがこのとき、彼女に500万円を支払ったという。一条は私に「退職金だった」と説明した。

加藤詩子はその著書で、一条と「510」オーナーは愛人関係にあり、退職金は一種の手切れ金だったのではないかと推測している。確かに、短期間しか勤めていないにもかかわらず500万円の退職金を支払うのは普通ではない。今では私も、手切れ金の可能性が高いと考えている。

ゲンは一条に男性関係も整理させようと、かつて彼女と一緒に寿司店を営んだ吉田三郎を呼びつけている。ゲンは私にこう語った。

「わしが岸里のマンションでちゃんと手を切らした。吉田は『完全に別れます』と言いました。雄琴(大津市)のソープランドで番頭みたいなことをやっていたようです」

その話し合いを通して、ゲンは吉田に馬主の知り合いがいると知る。その後、あるアイデアが浮かび、一発勝負に出る。一条の「退職金」から100万円を競馬につぎ込もうと考えたのだ。

ある日、ゲンは吉田に連絡をとった。

「あんた、どの馬の馬主、知っとるんや」

答えを聞いたゲンは、たたみかける。

「その馬、今度のレースに出るんと違うんか。勝てるかどうか、聞いてみてくれ」

律義にも、吉田はすぐに連絡してきた。

「ものすごい調子がいいらしい。勝てると思います。最低でも2着には入りますわ。保証します」

「ほんまやな。もし負けたら、どないなるかわかっとるんやろな」

ゲンは枠連で、その馬から流すように計100万円を賭けた。