若者の孤独とSNS 質の高いつながりが大事

AI要約

若者はSNSで複数のアカウントを使い分けることが普通になっているが、孤独感から解放されていない可能性あり。

Z世代の多くがオンラインとオフラインの人格の違いを感じ、オンラインの方が自己表現しやすいと答えている。

ネットでの交流に救われる若者もいるが、SNS疲れやコミュニケーション量にストレスを感じる人も多い。

若者の孤独とSNS 質の高いつながりが大事

 若者にとって、SNSで複数のアカウントを使い分けることはもはや常識となっています。メインアカウントでは知り合いと広く交流し、サブアカウントでは親しい友人だけにする、匿名アカウントでネットのみのつながりと交流するなど、切り分けています。また、投稿ごとに公開範囲を限定することも珍しくありません。このように、ネットを上手に使って人との交流を楽しんでいるようですが、実は孤独の解消には至っていないという調査があります。

 レノボ・ジャパンがデジタルウェルネスをテーマに掲げたキャンペーン「Meet Your Digital Self」において、2024年5月に発表した調査※1によると、「オンラインとオフライン(現実社会)の人格が違うと感じますか?」との問いに対し、Z世代の67%が「いつも感じる」「感じることがある」と答えたそうです。

※1 レノボ・ジャパン「レノボ、デジタルウェルネス推進におけるテクノロジーとAIの活用方法を提示」

 「オンラインとオフライン(現実社会)どちらが自己表現しやすいですか?」の問いには、「オンラインの方が自己表現しやすい」とZ世代の49%が答えています。これらの回答は、そのほかの世代よりも高かったとのことです。Z世代は、いつもの自分とは異なるオンラインの人格の方が自己表現しやすいと感じているという特徴があるようです。

 つまり、オンラインでの活動と比較すると、現実の生活にストレスを感じているとも解釈できます。調査では、Z世代の60%が「オフラインの世界で家族や大切な人と心のつながりを深める対話ができたらよいと思う」と回答しています。

 こうした若者の特性を捉え、NPO法人あなたのいばしょ※2は、電話ではなくチャットで相談できる窓口を設けています。

※ 2 https://talkme.jp/

 キャンペーンの発表会で、あなたのいばしょ理事長の大空幸星氏は、「SNSが生まれてコミュニケーションの総量は増えているのに、つながりが強化されていない。自殺は高止まりをしていて、いじめや不登校の件数も過去最多を記録している。これは質の悪いつながりが同時に増えているからだ。一方、内閣官房孤独・孤立対策担当室が行った調査※3では、SNSや電子メールで連絡を取り合う頻度が高ければ高いほど、孤独感は低いということも明らかになっている。質の高いつながりを確保していくことができれば、孤独感を軽減できる可能性がある」と話しました。

※ 3 内閣官房孤独・孤立対策担当室「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)調査結果の概要」

 SNS疲れを感じている若者も多くいます。投稿や「いいね」数を見て「自分よりも幸せそう」とストレスを感じたり、いつでも送られてくるメッセージへの返答に悩んだりと、これまでの時代にはなかったコミュニケーション量に負担を感じているのです。とはいえ、ネットでの交流に救われることもあります。若者のメンタルヘルスには、ネットとリアルのバランスをいかに取るかが重要なポイントとなりそうです。

出典:日経パソコン、2024年7月22日号より

鈴木 朋子=ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー

日立ソリューションズにてシステムエンジニア業務に従事、のちフリーライターに。SNS、スマホ、パソコン、Webサービスなど、入門書の著作は20冊を越える。ITの知見と2人の娘の子育て経験を生かして、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」として活動中。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)