公式Xはフォロワー280人…巨額赤字「クールジャパン」が再始動も“現場のアニメーター”は置いてけぼりの実態

AI要約

日本のコンテンツ産業の海外展開を支援するクールジャパン機構について、実際の活動がアニメや漫画支援に限らず、経済産業省の官民ファンドであることが指摘されている。

アニメ業界に対する政府の支援が過剰と見做される中、クールジャパンの実効性や透明性が問題視されており、政策効果の検証が困難である状況が明らかになっている。

政府の支援が中心となるクールジャパン政策と、クールジャパン機構との間には幅広い乖離があり、運営側のやる気不足も露呈している。

公式Xはフォロワー280人…巨額赤字「クールジャパン」が再始動も“現場のアニメーター”は置いてけぼりの実態

 日本のコンテンツ産業の海外展開を図るべく、2013年11月に経済産業省の主導で設立されたクールジャパン機構。その累積赤字は2023年3月時点で約356億円に達し、あまりにも投資計画が杜撰ではないかと批判されてきた。

(全2回の第1回)

 事業の廃止も噂されていたが、今年の6月にいきなり内閣府からクールジャパンの新戦略が公表された。現在、日本のコンテンツ産業は約4.7兆円の規模といわれるが、これを33年までに約20兆円の規模まで引き上げることを目指すという。

 ところで、クールジャパンという言葉を聞くと、アニメや漫画を連想する人が大半ではないだろうか。そして、クールジャパン機構は、日本発のコンテンツの海外展開を支援するために設立されたと思うだろう。しかし、大手アニメ会社の元執行役員で文化政策に詳しいA氏によると、世間のイメージと実態には著しい乖離がみられるという。

「クールジャパン機構は、正式名称を“株式会社海外需要開拓推進機構”といい、アニメや漫画だけを支援する組織ではありません。クールジャパン機構のホームページに公開されている事業報告をご覧になってみてください。日本のアニメや漫画を支援する事業は、多く見積もっても2割に満たないのではないでしょうか」

 最近、アニメ人気の過熱ぶりが経済誌やワイドショーでも取り上げられるようになったこともあり、あるアニメ業界関係者は「政府の支援が手厚くて羨ましいですね」「世界中で儲かっていいでしょう」などと言われたことがあるという。しかし、A氏は首を傾げ、こう続ける。

「クールジャパンの名のもとで様々な組織や予算が乱立していますが、既に述べたように、その多くはコンテンツ支援とは関係がないわけです。“コンテンツ業界は政府から潤沢な公金で支援されている”とか、“国策のおかげでアニメや漫画が世界中でブームになったのだ”という主張を聞くと、びっくりしてしまいます。少なくとも、エビデンスのある話ではありません」

 さらに言えば、クールジャパン機構は、あくまでも経済産業省が設立した官民ファンドに過ぎない。日本の国策であるクールジャパン政策と、クールジャパン機構はイコールではないのだ。とにかく似たような言葉や組織が誕生してややこしいが、ひょっとすると、例のごとく天下りなどの温床にするためなのではないかと勘繰ってしまう。

 やる気のなさも際立つ。「内閣府公式クールジャパン」のXアカウントは2022年8月から運用を開始し、2024年7月17日時点でフォロワーがわずか280人である(筆者の個人アカウントですらフォロワーは470人いる)。ポストの回数も少なく、「いいね」は毎回わずか数件、なかには1件しかないものもあるほどだ。A氏はこう話す。

「私は、クールジャパンの政策効果の検証が困難である点を特に問題視しています。ファンドを間に挟むため、政府がコンテンツのために用意した予算の多くは、ブラックボックス化しているのです」