「対話ができない男」石丸伸二ができるまで 安芸高田市議が証言「就任当初は攻撃的ではなかったのに…」

AI要約

石丸伸二氏が都知事選で注目を集めたが、選挙後の態度が批判され、過去の市長時代で市議を追い込んだことも明らかになった。

石丸氏は市議会での厳しい発言が話題を呼び、SNSで拡散されたが、市政は混乱し、議員は誹謗中傷を受けた。

市議会の議員達が石丸氏との関係によるクレームや攻撃に悩まされ、市政は停滞した状況が続いた。

「対話ができない男」石丸伸二ができるまで 安芸高田市議が証言「就任当初は攻撃的ではなかったのに…」

 今最も注目されている“政治家”といえば、東京都知事選で得票数2位となった石丸伸二氏(41)だろう。動画やSNSを駆使した巧みな選挙戦を展開し、特に20~30代の若者世代から支持を集めた。だが、選挙後に出演したテレビ番組ではコメンテーターからの質問にまともに取り合わなかったり、高圧的な態度を取ったりしたことで評価が一変。SNSでは「まるでパワハラ上司みたい」という声も多く上がった。そんな石丸氏の姿を間近で見ていたのが、広島県の安芸高田市議たちだ。同市長だった石丸氏は意見が対立する市議を議会で追い込み、その様子が“切り抜き動画”としてネット上で拡散。市政が大混乱しただけでなく、市議たちは全国から激しい誹謗中傷を受けることになった。現役の市議が明かす石丸氏の“素顔”とは――。

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「石丸さんは相手を論破するばかりで対話ができないんです。なので、政策についての話し合いは全然進まず、市政は停滞していました。もし石丸さんが都知事に当選したら、東京も安芸高田市のように混乱が巻き起こったと思います」

 現職の安芸高田市議・Aさんは、2020年8月から今年6月までの石丸市長時代をこう振り返る。

 人口約2万5千人という小さな市の首長だった石丸氏。その名を一躍全国に広めたのが、22年6月の市議会での「恥を知れ」発言だ。議会中に居眠りをする、一般質問をしないなど職務怠慢の様子を見せる市議たちに、石丸氏は「恥を知れ、恥を!……と、言う声があがってもおかしくないと思います」と厳しい口調で投げかけた。

 この発言の真意について、石丸氏は後に、次のように明かしている。

「どういう言葉だったら響くのか、刺さるのかっていうのをけっこう数日考えて、恥という言葉に行き着きましたね。メディアの(キャッチーな言葉を切り取って報道する)パターンを見て、これに乗ったらいいんだと」

■「老害」「アホばばあ」と誹謗中傷

 石丸氏の狙い通り、「恥を知れ!」というワードがテレビで大きく取り上げられると、“旧態依然とした市議会と闘う若き市長”として注目を集め、自身のXのフォロワーや同市の公式YouTubeチャンネルの登録者が爆発的に増えた。

 議会で石丸氏と市議たちが舌戦を繰り広げる様子は、SNSの人気コンテンツとなり、“切り抜き動画”となって拡散された。冒頭の市議・Aさんは、当時の石丸氏の様子をこう語る。

「少なくとも就任当初はここまで過激ではありませんでしたが、次第に自分に批判的な議員への攻撃がエスカレートしていきました。動画になった時に炎上するよう、議場内の状況を作っていくような印象です。YouTuberたちは、再生数を稼げるんだから当然食いつきますよ。でもそのせいで問題が起きても、石丸さんは『動画を作った人の責任』という姿勢を崩しませんでした」

 Aさんの言う「問題」の最たる例が、市役所や議会事務局に押し寄せる大量のクレームだ。石丸氏と対立する議員や市議会を批判する内容の電話、メール、手紙が毎日数十件届き、職員たちはその対応に追われて本来の業務に支障が出ていた。クレームの大半は、市外や県外から寄せられたものだったという。

 直接的な個人攻撃に遭う議員もいた。その一人が、石丸氏が2020年に、「恫喝(どうかつ)を受けた」として名指しした女性市議だ。その攻撃の様相を知るAさんはこう明かす。

「SNSで『老害』『アホばばあ』などと激しく非難されたり、彼女の友人までコメントでかみつかれたりしていました。後援会のFacebookは、『死ね』『殺す』といった過激なコメントが並んだせいか利用規約違反で凍結されていました。Googleマップに彼女の自宅が登録されて、そこに誹謗中傷のコメントが大量についたこともありましたね」